研究概要 |
研究代表者らは、これまでにサツマイモ、プロポリス、コーヒー等に含まれるカフェオイルキナ酸が、アルツハイマー型認知症の毒素であるアミロイドβ(Aβ)による神経細胞死を保護する作用のあること、また記憶障害モデルマウスを用いた経口投与実験で顕著な記憶障害改善作用のあることを見出した。さらに最近、カフェオイルキナ酸(CQA)類にアミロイドβ凝集阻害活性があることを見出したことから、本研究では食用植物から新たなアミロイドβ凝集阻害物質を探索するとともに生物有機化学的手法を用いてカフェオイルキナ酸類や新たに見出したアミロイドβ凝集阻害物質の作用機序を解明することで、アルツハイマー型認知症に対する予防や治療薬の開発に貢献することを目的とする。そこで本研究では、すでにAβ凝集阻害活性を有する化合物として、プロポリスから見出したCQA類によるAβ凝集阻害活性の機構を調べた。まず、キナ酸およびカフェ酸を出発原料として種々のCQA類を化学合成し、天然物から単離した化合物と併せて11種類のCQA類を活性試験に用いた。これらの化合物のTh-T試験を行ったところ、カフェオイル基の数とカテコール構造の水酸基が活性発現には重要であることを見出した。次に、最も活性の高かった4,5-di-O-caffeoylquinic acid (4,5-di-CQA)と3,4,5-tri-O-caffeoylquinic acid (3,4,5-tri-CQA)を用いて、TEMによる観察ならびにCDスペクトルによるAβのコンホメーション変化を調べた結果、Aβの凝集が阻害されていることが明らかとなった。さらに、ウェスタンブロッティング法を用いてAβのオリゴマー形成への影響を調べた結果、4,5-di-CQA ならびに3,4,5-tri-CQAによってAβのオリゴマー形成が抑制されていることが明らかとなった。
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