研究課題/領域番号 |
24580156
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
繁森 英幸 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70202108)
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キーワード | カフェオイルキナ酸 / Aβ凝集阻害活性 / アルツハイマー症 / Th-T / サツマイモ / フェニルエタノイド配糖体 / HGF / 記憶障害改善 |
研究概要 |
研究代表者らは、これまでにサツマイモ、プロポリス、コーヒー等に含まれるカフェオイルキナ酸が、アルツハイマー型認知症の毒素であるアミロイドβ(Aβ)による神経細胞死を保護する作用のあること、また記憶障害モデルマウスを用いた経口投与実験で顕著な記憶障害改善作用のあることを見出した。さらに最近、カフェオイルキナ酸類にアミロイドβ凝集阻害活性があることを見出したことから、本研究では食用植物から新たなアミロイドβ凝集阻害物質を探索するとともに生物有機化学的手法を用いてカフェオイルキナ酸類や新たに見出したアミロイドβ凝集阻害物質の作用機序を解明することで、アルツハイマー型認知症に対する予防や治療薬の開発に貢献することを目的とする。そこで本研究では、Th-T試験を指標にして種々の植物由来ポリフェノール化合物のスクリーニングを行った結果、オリーブ等に含まれるフェニルエタノイド配糖体Acteosideに顕著な活性を見出した。そこで、Acteoside類を単離し、さらに種々の類縁化合物に誘導して構造活性相関を検討した。その結果、カテコール構造がアミロイドβの凝集阻害活性発現に重要であることを明らかにした。一方、神経変性疾患において肝細胞増殖因子(HGF)が有効であることが報告されていることから、植物由来ポリフェノールについてHGF産生促進活性を調べた。その結果、カフェオイルキナ酸、フェニルエタノイド配糖体ならびにジンチョウゲから単離したDaphnane型ジテルペンやビスフラボノイド類に顕著な活性があることを見出した。したがって、カフェオイルキナ酸やフェニルエタノイド配糖体は、HGF産生を促進させることにより、神経細胞保護作用を示すという新たな知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェニルエタノイド配糖体類ならびにそれらの誘導体を用いてアミロイドβ(Aβ)凝集阻害活性に対する造活性相関研究を行った結果、昨年度までのカフェオイルキナ酸類での結果と同様に、アミロイドβ凝集阻害活性においてカテコール構造が重要であることを明らかにした。また、カフェオイルキナ酸やフェニルエタノイド配糖体にHGF産生促進活性が認められたため、これらの化合物の新たな神経細胞保護作用を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
Th-T試験法を活用して、他の食用植物からカフェオイルキナ酸やフェニルエタノイド配糖体以外のアミロイドβ凝集阻害物質を探索する。また、フェニルエタノイド配糖体におけるカテコール部分の重要性を調べるために、酸化や還元環境下でのアミロイドβとの作用を調べる。一方、凝集阻害物質による神経細胞保護活性の仮説として、このような活性物質がアミロイドβのコンホメーションを変化させることが指摘されている。そこで毒性コンホマーの存在比が多いとされるE22P変異体および22,23番目のターン構造をラクタムにより固定した配座アナログ体(両ペプチド化合物は連携研究者により作製)を用いて、ウェスタンブロッティング法によりフェニルエタノイド配糖体類によるオリゴマー形成への影響を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していた実験器具や試薬類が他予算や譲渡等により、十分に賄えたことから、次年度に繰り越すこととした。 Th-T試験法を活用して、他の植物からカフェオイルキナ酸やフェニルエタノイド配糖体以外のアミロイドβ凝集阻害物質を探索する。また、フェニルエタノイド配糖体におけるカテコール部分の重要性を調べるために、酸化や還元環境下でのアミロイドβとの作用を調べる。一方、凝集阻害物質による神経細胞保護活性の仮説として、このような活性物質がアミロイドβのコンホメーションを変化させることが指摘されている。そこで毒性コンホマーの存在比が多いとされるE22P変異体および22,23番目のターン構造をラクタムにより固定した配座アナログ体(両ペプチド化合物は連携研究者により作製)を用いて、ウェスタンブロッティング法によりフェニルエタノイド配糖体類によるオリゴマー形成への影響を調べる。この際に毒性オリゴマーを検出するための抗体を購入する経費ならびに実験器具の購入費に繰越分を使用する。
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