研究代表者らは、これまでにサツマイモ、プロポリス、コーヒー等に含まれるカフェオイルキナ酸が、アルツハイマー型認知症の毒素であるアミロイドβ(Aβ)による神経細胞死を保護する作用のあること、また記憶障害モデルマウスを用いた経口投与実験で顕著な記憶障害改善作用のあることを見出した。さらに最近、カフェオイルキナ酸類にアミロイドβ凝集阻害活性があることを見出したことから、本研究では食用植物から新たなアミロイドβ凝集阻害物質を探索するとともに生物有機化学的手法を用いてカフェオイルキナ酸類や新たに見出したアミロイドβ凝集阻害物質の作用機序を解明することで、アルツハイマー型認知症に対する予防や治療薬の開発に貢献することを目的とする。そこで本研究では、Th-T試験を指標にして種々の植物由来ポリフェノール化合物のスクリーニングを行った結果、フェノール性水酸基をもつハナノキ由来のGinnalin類とジンチョウゲ由来のビスフラボノド化合物Daphnodorin類に顕著なAβ凝集阻害活性を見出した。これらの化合物の誘導体を用いて構造活性相関を調べた結果、フェノール性水酸基の数が活性発現には重要であることを明らかにした。またカバノアナタケから単離したHispidin化合物であるPhelligridin類や地骨皮から単離したKukoamine類に顕著なAβ凝集阻害活性があることも見出した。また、これらの化合物には顕著な肝細胞増殖因子(HGF)産生促進活性のあることも見出されたことから、HGF産生を促進させることによって神経細胞保護作用を示すという新たな知見も得られた。
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