研究課題/領域番号 |
24580158
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
安藤 哲 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50151204)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 昆虫フェロモン / セミオケミカル / キラル合成 / キラルHPLC / 立体選択的 / 立体反転 / メチル分岐 / ハモグリガ |
研究概要 |
メチル分岐を有する昆虫フェロモンは、位置異性および立体化学の両面で興味深い研究対象である。本研究ではそれらに焦点を当て、新たなキラル合成法を確立するとともに、関連する化合物を系統的に合成し分析データを集積することを計画した。さらに、それらのデータを活用することにより、新規フェロモン成分の同定が容易になるとともに、害虫防除のためのモニタリング資材開発の基礎が築かれることが期待される。 24年度は、まずメチル基反転反応を利用したキラルな合成ユニットの調製を検討した。比較的安価で光学活性なプロピレンオキサイドを原料にして、Grignard試薬との反応で光学活性な二級アルコールを合成した。そのトシル化物をキラルHPLCにて分析したところ、反応はラセミ化することなく進行することが確認されたため、その二級トシル化物と種々の求核試薬とのSN2反応を試みた。最終的にマロン酸ジエチルのエノラートの処理が、メチル基が高い選択性のもとに反転した生成物を与えることを発見し、脱炭酸の後に3位にキラルなメチル基を有する合成ユニットに導くことにも成功した。一方、メチル p-トリルスルホンから調整したカルバニオンも効率よく反応し、2位にキラルなメチル基を有する合成ユニットへと導くことが出来た。キラルHPLC分析の結果、いずれのユニットの合成もラセミ化が全く進行していないことが確認でき、両者をカップリングすることで1,4-ジメチル構造を有する光学活性な化合物が合成可能となった。この立体選択的合成法を利用して、ハモグリガの1種であるLeucoptera scitellaの性フェロモンの4つの立体異性体を高収率で合成することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでSN2反応は反転後の光学純度を確認する簡便な方法が確立していなかったため、フェロモン合成に殆ど利用されてこなかったが、キラルHPLCの導入でラセミ化の有無を明らかにすることに成功した。これらのことから、ハモグリガの性フェロモンの合成に関するレポートは高い評価を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今回確立した合成法は様々なフェロモン合成に応用可能であり、さらなる発展が十分に期待できる。蛾類昆虫の炭化水素系の性フェロモンに限らず、カメムシなどの分泌するケトン類などの合成を目的に、現在いくつかの官能基を含む合成ブロックの作成が進行中であり、今後それら光学活性なフェロモン類の合成を試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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