研究概要 |
ハガタキコケガ(ヒトリガ科:コケガ亜科)の雌成虫は、性フェロモン成分として新規なメチル分岐を有する2級アルコール5-methylheptadecan-7-ol(1)を分泌する。4つの立体異性体の誘引活性から天然フェロモンは(5R,7R)-体であることを推定したが、それらは1つのキラル中心のみを立体選択的に導入し、得られたジアステレオマーをHPLCで分離する方法で調製したものであった。そこで今回、新たに完全なキラル合成の方法を確立するとともに、直鎖炭素数の異なる幾つかの類縁化合物も合成し、野外試験にて雄蛾の分岐位置の認識能力に関する知見を得ることを目的として実験を行った。 その結果、(S)-propylene oxide((S)-2)から得られるキラルな二級アルコールのトシル化物(3)に、立体反転を伴うNaCH(CO2Me)2のSN2反応を行った。得られたジエステル(4)を一連の反応(脱炭酸、還元、酸化、Corey-Chaykovsky反応)で1炭素伸長したエポキシ化合物(5)に導き、Jacobsen 速度論的光学分割を利用して(2S,4R)-体のみとし、その後に必要なアルキル鎖をカップリングすることで単一なエナンチオマー(5R,7R)-1を得た。同様にして、(R)-2から(5S,7S)-1を合成し、順相キラルHPLCで各光学純度を測定したところ、どちらも高いエナンチオマー過剰率(>99 % ee)を有していた
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