研究課題/領域番号 |
24580161
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安立 昌篤 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80432251)
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キーワード | 有機化学 / 合成化学 / 天然物化学 |
研究概要 |
本研究では、ラジカル環化を鍵反応として特異な架橋型多環性骨格の効率的な合成法を開発し、生理活性の詳細が明らかにされていない希少天然有機化合物の化学合成を目的としている。具体的には、植物寄生性農害虫であるジャガイモシスト線虫の孵化機構において重要な因子であり、高度に歪んだシクロブタン骨格を含むソラノエクレピンAの合成研究を行う。特に、右側部分はシクロブタンを含むトリシクロ[5.2.1.01,6]デカン構造からなり、生理活性発現に必須であると考えられている。しかし、トリシクロ[5.2.1.01,6]デカンは連続する不斉四級炭素を含み高度に歪んだシクロブタンから構成されるため、その効率的な合成法の確立が最も重要な課題となる。この研究は、官能基化されたシクロブタンを持つ多環性天然物にも適用可能なラジカル環化によるシクロブタン合成法を確立する同時に、ソラノエクレピンAの特異なシクロブタン構造と活性発現の関係を明らかにするための基盤を形成する。 前年度(平成24年度)は、Bu3SnHとAIBNから発生させたスズラジカルの共役付加を鍵反応としてシクロブタンの合成を行ったが、環化反応は全く進行せず望むトリシクロデカンは全く得られなかった。平成25年度は、本反応における条件や基質特異性を検討した結果、二環性基質の歪んだ分子構造がラジカル共役付加の進行を妨げていることが明らかとなった。また、異なるラジカル共役付加反応を駆使して、困難が予想されるがなるべく短行程で合成できる方法を行った。すなはち、Hajos-Parrishケトンから四段階で合成したアルデヒド誘導体に対して、SmI2を作用させることでケチルラジカルアニオンを発生させラジカル共役付加を行ったところ、速やかに環化反応が進行して、望むトリシクロデカンを合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラジカル環化によるシクロブタンの構築を鍵反応とする独自の合成法を見出すことができ、高度に歪んだシクロブタンを持つトリシクロ[5.2.1.01,6]デカン骨格の構築法を確立した。SmI2によるシクロブタン合成はすでに報告されているが、Thorpe-Ingold効果を利用した単純な鎖状基質でのラジカル環化が達成されるのみで、高度に歪んだシクロブタンの合成例は全くなかった。本反応を利用して、さらに官能基化されたトリシクロ[5.2.1.01,6]デカンの合成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
シクロブタンを有するモデル化合物を利用して、反応性が高い橋頭位のラジカルによる側鎖の導入も成功している。ラジカル還元剤や溶媒の種類などを精査し反応条件の最適化し、橋頭位ラジカルを発生させることで不斉四級炭素の構築を伴ったシクロプロパンを含む側鎖導入を行う予定である。また、右セグメントである官能基化されたトリシクロ[5.2.1.01,6]デカンの合成法の確立した後、ソラノエクレピンAの全合成を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
モデル化合物を利用して橋頭位のラジカルによる側鎖の導入も成功しているが、シクロブタンを含むトリシクロ[5.2.1.01,6]デカンへの側鎖導入の最適条件化が不十分あることが原因である。 反応条件の最適化するため、高価な遷移金属試薬などの購入を計画して還元剤や溶媒の種類などを精査する。
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