研究実績の概要 |
本研究では、ラジカル環化を鍵反応として特異な架橋型多環性骨格の効率的な合成法を開発し、生理活性の詳細が明らかにされていない希少天然有機化合物の化学合成を目的としている。具体的には、植物寄生性農害虫であるジャガイモシスト線虫の孵化機構において重要な因子であり、高度に歪んだシクロブタン骨格を含むソラノエクレピンAの合成研究を行う。特に、右側部分はシクロブタンを含むトリシクロ[5.2.1.01,6]デカン構造からなり、生理活性発現に必須であると考えられている。しかし、トリシクロ[5.2.1.01,6]デカンは連続する不斉四級炭素を含み高度に歪んだシクロブタンから構成されるため、その効率的な合成法の確立が最も重要な課題となる。この研究は、官能基化されたシクロブタンを持つ多環性天然物にも適用可能なラジカル環化によるシクロブタン合成法を確立する同時に、ソラノエクレピンAの特異なシクロブタン構造と活性発現の関係を明らかにするための基盤を形成する。 前年度(平成25年度)は、SmI2によるラジカル共役付加反応を駆使して、Hajos-Parrishケトンから四段階で合成したアルデヒド誘導体に対して、ケチルラジカルアニオンを発生させラジカル共役付加を行ったところ、速やかに環化反応が進行して、望むトリシクロデカンを合成することに成功した。 平成26年度は、ソラノエクレピンAの合成に向けて、ABC環に相当する左セグメントの合成を検討した。D-パントラクトンからラジカル環化反応とヨードエーテル化によって、AB環に相当するオキサビシクロ化合物を合成した後、アセチレンとビニル側鎖を順次導入し環化前駆体を得た。これに対して、Grubbsの第2世代触媒を用いたエンインメタセシスにより、7員環(C環)を構築し左セグメントである三環性化合物の合成に成功した。
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