研究概要 |
本研究は、香気成分組成の異なるペチュニアにおいてフェニルプロパノイド系香気物質の多様性を生み出す二重結合還元反応に着目し、生合成経路の鍵酵素であるDouble bond reductase(DBR)の同定と酵素化学的解析を通して、ペチュニア香気物質の生合成系の分岐がどの段階で起こっているかを解明することを目的としており、今年度はペチュニア花弁からDBR候補遺伝子の探索を行った。既知の還元酵素ファミリーの保存領域から設計した縮重プライマーを用いてPCRを行ったところ、DBRファミリーとアミノ酸レベルで約70%の相同性を持つ300bpの部分配列を獲得した。さらに、得られた配列情報をもとにRACE-PCRを行い、1041bp、1032bp、1056bpの長さを持つ3つの全長遺伝子を単離することに成功した。これら3つの候補遺伝子(PapDBR1, PapDBR2, PapDBR3)を大腸菌発現系により組換え酵素として発現させ、アフィニティー精製により約38kDaの精製酵素を得ることができた。現在、精製酵素を用いて、分子内にα、β-不和飽和カルボニル二重結合を持つ様々な基質に対する酵素活性測定を行っている。一方で、同位体標識化合物を用いたトレーサー実験により還元反応が起こる反応段階を推定するため、重水素ラベルした標識化合物(phenylalanine, p-coumaric acid, ferulic acid)の合成も行っている。
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