研究概要 |
本研究では、フェニルプロパノイド系香気成分の多様性を生み出す二重結合還元反応に着目し、生合成経路の鍵酵素であるdouble bond reductase (DBR)の単離と酵素化学的解析を通して、ペチュニア香気成分の生合成の分岐がどのステップで起こっているのかを明らかにすることを目的とした。今年度は、還元反応が起こる段階を推定するため、同位体標識化合物の調製およびそれらを用いたトレーサー実験の条件検討を行った。さらに、ペチュニア花弁から単離した3つのDBR候補遺伝子(PapDBR1, PapDBR2, PapDBR3)の組織特異的遺伝子発現解析も行った。 重水素ラベル化合物としてフェニルアラニン、p-クマル酸、フェルラ酸を切り花に処理する際、処理液としては5%炭酸水素ナトリウム溶液を用いると最も効率良く化合物が吸収されることがわかった。一方、候補遺伝子の遺伝子発現解析では、PapDBR2, PapDBR3が全組織(leaf, stem, tube, limb, sepal, stigma, anther)で発現しているのに対し、PapDBR1は花芽特異的(tube, limb, stigma)に発現していた。さらに、PapDBR1は開花とともにその遺伝子発現量が増加していたことから、本酵素遺伝子がペチュニア香気組成の違いに寄与していることが推測された。
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