研究課題/領域番号 |
24580163
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
石原 亨 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80281103)
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研究分担者 |
手林 慎一 高知大学, 自然科学系, 准教授 (70325405)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エンドファイト / インドリジジンアルカロイド / スワインソニン / マメ科植物 |
研究概要 |
今年度は、インドリジジンアルカロイドの抽出法を検討した上で、植物の部位ごとの蓄積量の違いを調べた。さらに、糸状菌、細菌、および昆虫に対するインドリジジンアルカロイドの生物活性を検討した。 Oxytropis glabraの根、葉、茎を10倍量のメタノールで抽出した。得られた抽出液を濃縮した後、95%アセトニトリルに溶解し、アミドカラムを用いたLC-MS/MSによって分析した。また、多量のスワインソニンを得るために、Rhizoctonia leguminicolaを培地10 Lに接種し、21日間静置培養した。菌体をメタノールで抽出し、クロマトグラフィーによる精製を行い、スワインソニンを得た。イネいもち病菌、イネごま葉枯れ病菌、およびイネ科斑点病菌の胞子に対する発芽阻害活性試験、大腸菌と枯草菌を用いた抗菌活性試験、ヒラタコクヌストモドキの成虫を用いた殺虫活性試験を行った。 新たに確立した抽出方法を用いて、O. glabraの葉、茎、根に含まれるスワインソニンを定量したところ、そのそれぞれの部位での蓄積量は0.23、0.45、および0.48 mg/gDWであった。つづいて、R. leguminicola ATCC 26280を大量に培養し、スワインソニンの精製を行い、スワインソニン13 mgを得た。これを用いて、糸状菌、細菌、および昆虫に対する毒性を調べた。スワインソニンは、いずれの糸状菌においても胞子発芽を阻害しなかった。一方で、大腸菌に対して、1000 ppmの濃度でその増殖を抑制する傾向を示したが、枯草菌の増殖は抑制しなかった。殺虫活性試験では、21日間観察を続けたが、この期間中ヒラタコクヌストモドキはすべて生存していた。以上の結果から、スワインソニンは、高濃度で大腸菌の増殖を抑制したものの、対象とした糸状菌、細菌、昆虫に対しては強い毒性を示さないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物体からのインドリジジンアルカロイドの定量法を確立することができた。また、Rhizoctonia leguminicola を利用することによって、これまで困難であった、スワインソニンの大量調製が可能になった。これにより研究を大きく進展させる事ができた。 得られた化合物を用いいて、実際に、糸状菌、バクテリア、昆虫に対する生物活性を調べる事もできたため、概ね、研究は順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究で、エンドファイトのみならず、マメ科植物の病原菌である、Rhizoctonia leguminicolaがスワインソニンを高濃度に生産することがわかった。このことから、スワインソニンは、糸状菌が感染を確立するために何らかの役割を果たしている可能性が示唆される。そこで、次年度は、スワインソニンがR. leguminicolaの実際の宿主であるアカツメクサやクリムゾンクローバーのマンノシダーゼを阻害することができるのかを確認する。さらに、マンノシダーゼ以外のグリコシダーゼについてもその影響を調べる。つづいて、これらの植物における、病害抵抗反応の発現を調べるための実験系を確立する。アカツメクサやクリムゾンクローバーのファイトアレキシンの蓄積量を指標として抵抗反応の発現を評価する計画である。これによって、病害抵抗反応の発現に及ぼす、スワインソニンの効果を調べることが可能になる。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、当初の予定より速やかにスワインソニンの調製法を確立する事ができた。そのため、試行錯誤のために使用を予定していた、有機溶媒やガラス器具、HPLC用のカラムなどに計上していた費用を抑えることが可能になった。しかしながら、スワインソニンを大量に調製するには、さらに、繰り返してR. leguminicolaを培養することが必要になる。同時に精製のさらなら効率化も必要である。これらを達成するために、昨年度、使用を予定していた費用を充当する。また、酵素活性の測定のための基質や、アカツメクサやクリムゾンクローバーの誘導性二次代謝産物の分析のための標準品購入、HPLCカラムなどに予算を使用する計画である。
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