Rhizoctonina leguminicolaではスワインソニンはリジンから,サッカロピン,ピペコリン酸を経て生合成されると推定されている.そこで,R. leguminicolaゲノムからこの経路上に存在すると考えられる遺伝子を推定した.さらにスワインソニンの蓄積量と,生合成遺伝子の発現量,さらに,リジン,サッカロピンなどの生合成中間体の蓄積量との関連を調べた. 培養開始から,2週目~4週目の間にスワインソニンの蓄積量は顕著に増加する.これに対応して,サッカロピンデヒドロゲナーゼ1とサッカロピデヒドロゲナーゼ2,および,ピロリン-5-カルボン酸レダクターゼの3つの遺伝子の発現が増大した.一方で,サッカロピン,アミノアジピン酸,リジンの蓄積量はこのとき顕著に減少した.これは,これらの中間体がスワインソニンの生合成に動員されたためとみることができた. 一方で,培地に添加するスクロールの量を変化させるとスワインソニンの蓄積量が大きく変わることがわかった.スワインソニンの蓄積のためには,30 g/Lのスクロース濃度が最適で,それよりもスクロース濃度が高くても低くてもスワインソニンの蓄積量は減少した.まず,スクロース濃度が高いときの遺伝子の発現を調べるとサッカロピデヒドロゲナーゼ2の発現が小さく,リジンの蓄積量も小さいことがわかった.このため,スクロース濃度が高いときにはリジンが十分合成されず,その結果,スワインソニンの蓄積が抑制されると推定された.次にスクロース濃度が低い場合について検討した.この場合には,アミノアジピン酸,サッカロピン,リジン濃度が高く,検討した生合成酵素遺伝子の発現も高かったにも関わらず,スワインソニンは蓄積しなかった.したがって,リジンからスワインソニンの間のどこかにスワインソニンの生合成の制御点が存在するものと考えられた.
|