研究課題/領域番号 |
24580165
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
田母神 繁 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (70315589)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ジャスモン酸 / メチルジャスモン酸 / ジャスモノイルイソロイシン / 植物揮発性化合物 / 防御反応 / テルペン |
研究概要 |
MeJAの移行とその代謝について、多種類の防御物質を生成する植物材料であるヒナタイノコズチを材料として実験を行った。重水素標識MeJAを下部茎葉部に投与し、24時間後に上位葉(遠隔部位)を抽出し、そこに含まれる重水素標識JA-IleをLC-MS/MSにより分析した。次に、移行先で防御反応が誘導されるか否かを明らかにするため、上位葉からの植物揮発性化合物の放出をGC-MSで分析した。MeJAを下葉に処理してから一定時間後にヘッドスペース中の揮発性有機化合物をサンプリングして分析した。さらに、上葉での揮発性有機化合物の生成がde-novo合成であることを確認する実験も行った。当初は標識した前駆体を与える実験を計画していたが、重水を下部茎葉部から投与することによって、重水素が効率的に揮発性有機化合物に取り込まれることを見出したことから、重水を使ったラベル化を指標にデノボ合成を解析した。 以上の実験を進めた結果、MeJAは下部茎葉部から上位葉に効率的に移行し、そこで活性型のJA-Ileに代謝されることを見出した、また、上位葉から重水素でラベルされた種々のテルペン化合物が放出されることも見出し、防御反応がde-novo合成であることを見出した。興味あることに、標識MeJAの標識JA-Ileへの代謝活性化に伴い、内生のJA-Ile量も大きく増加していることを見出した。また、放出された揮発性有機化合物のなかにはde-novo合成の比率が低い化合物も含まれ、防御反応は誘導応答の一辺倒ではないことも分かった。 これらの知見をまとめた論文が,Plant Signaling BehaviorとBiotechnology Lettersに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、実験対象化合物(メチルジャスモン酸)の、移行・代謝活性化・防御のde-novo合成という一連の反応を確認することができた。研究成果を論文にまとめ発表することもできた。また、上位葉からの揮発性有機化合物の分析中に、通常の青葉アルコールに加え、ユニークな化合物群を見出すことができた。防御反応物質代謝の新しい展開が期待できる。 現在のところ,この化合物はエステルであり,リノレン酸から誘導されると考えている。この化合物がヒナタイノコズチに特有な代謝産物なのかどうかも検討してゆきたい。食害によって誘導されるペプチドやタンパクの誘導は他の植物でも確認されていることから,研究の新規性という意味では,この新しい代謝産物に重点を置く研究も興味があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
MeJAによって上位葉で抵抗性反応が活性化されていることが確認できたので分析する化合物の対象を拡げて解析を行う。食害部位にプロテアーゼインヒビターなどの防御タンパクが生成することが知られていることから、アミノ酸代謝も変化していると予想される。遠隔葉でのこのような代謝物量の変化を解析する。 まずは、低分子量の有機酸、アミノ酸、脂肪酸、核酸などの代謝変化について解析する予定である。また、24年度の揮発性有機化合物の分析実験を進める過程で、リノレン酸の初期代謝産物であるヘキセナールの新規代謝経路を見出しつつあることから、これらの新規代謝産物の分析も同時並行的に進めてゆく計画である。 一方,食害によって誘導されるペプチドやタンパクの誘導は他の植物でも確認されていることから,研究の新規性という意味では,先に述べたように,新しい代謝産物に重点を置く研究も興味があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終的には,実際に害虫を使った食害による抵抗反応について解析する予定であるが,遠隔葉で誘導される反応の強さに定量性が得られないことも予想される。例えば、食害の葉面積や食害を受ける時間によって応答反応に強弱の差が生じることも十分に考えられる。実験の設定が困難な場合には、MeJAによって上葉で誘導される、ペプチド、蛋白質、有機酸、アミノ酸、脂肪酸、核酸などの代謝変化を含め、網羅的な反応解析を重点的に進める。 一方,JAがJAそれ自体の生合成をポジティブにフィードバックすることから、遠隔葉で少なくともリノレン酸の代謝が進み、他の一次・二次代謝が変化する可能性も高い。食害による応答を解析することが最終目標であるが、MeJAを使ったモデル実験でも多くの新規な発見が期待できると考えている。特に,リノレン酸から生じるヘキセナールの代謝について進めることも考慮して実験を進める予定である。
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