研究課題/領域番号 |
24580165
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
田母神 繁 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (70315589)
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キーワード | メチルジャスモン酸 / テルペン / 防御反応 / ヒナタイノコズチ / 揮発性物質 / デノボ合成 / 重水素 / ラベル化反応 |
研究概要 |
植物の自己防御シグナル物質であるメチルジャスモン酸の移行性についてこれまで検討してきた。その結果、メチルジャスモン酸を植物体の下部に処理すると茎葉部を速やかに移行して上葉に達した後、活性型のジャスモノイルイソロイシンに変換されること等を見出してきた。また、移行先で自己防御応答を誘導することも確認してきた。 そこで、25年度はその防御応答がデモボ合成であることを確かめる実験を行った。メチルジャスモン酸の投与と同時に、重水素を被検モデル植物であるヒナタイノコズチに与え、誘導される揮発性化合物(テルペン類)への重水素の取り込みを調べた。その結果、重水素の効率的な取り込みが確認され、揮発性化合物の誘導がデノボ合成であることを確認することができた。 一方、別な化合物グループに属する誘導物質であるホモテルペンは従来から半合成であることが示唆されていた。今回の実験はそれを実証する結果を得た。具体的にはDMNTと呼ばれるホモテルペンには重水素の取り込みが他のテルペンより低い比率であることを確認することができた。これらの結果はBiotechnology Letters に掲載された。Tamogami, S et al., Deuterium labeling for investigating de novo synthesis of terpene volatiles in Achyranthes bidentata, Biotechnology Letters 2013, 35(8):1247-1252.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
揮発性の防御物質について、これまでテルペンを中心に実験を進めて来た。実験モデル植物であるヒナタイノコズチはテルペンの他に、炭素数6の揮発性化合物も放出することをすでに見出している。特にヘキセン酸のメチルエステルはヒナタイノコズチに特有の揮発性化合物である。テルペン類の生合成と並行して、この化合物の生合成についても検討したところ、興味ある知見を得ることができた。これまで知られている炭素数6の揮発性化合物は(Z)-3-hexenalという共通の生合成前駆体から生合成されることが知られているが、ヘキセン酸のメチルエステル類は(Z)-3-hexenal以外の生合成前駆体から生合成されることを見つけることができた。また、試行錯誤の結果、生合成前駆体を推定することができ、さらにその生合成前駆体は植物体にプールされていることを示唆する結果も得ている。残りの研究機関でこれらの結果を検証することができれば、防御的揮発性物質の新規な生合成ルートの解明が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
①ヘキセン酸のメチルエステル類の生合成前駆体を特定するために、ラベル化した前駆体候補化合物を合成し、それらが揮発性防御物質に取り込まれるかどうか調べる実験を行う。 ②特に、メチルジャスモン酸処理によってヘキセン酸のメチルエステル類への標識取り込みが増加するかどうか検証する。 ③ 上記と並行して、アミノ酸代謝や防御的ペプチドの誘導についても分析実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
代謝物の分析実験に使用するためのHPLC用カラムを購入する予定であったが、すでに研究室にあった手持ちのカラムで代用できたので購入しなかった。 HPLC用カラムあるいはカートリッジカラムを購入して実験を進める。
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