研究課題/領域番号 |
24580166
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
五十嵐 康弘 富山県立大学, 工学部, 教授 (20285159)
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キーワード | 二次代謝 / 生合成 / 放線菌 / 糸状菌 |
研究概要 |
新規な含窒素複素環構造を有するポリケタイド化合物alchivemycinの生合成遺伝子クラスターの同定を試みた。生産菌Streptomycesのゲノム解析を行い、遺伝子配列の相同性に基づきPKSを抽出し、alchivemycinの炭素骨格形成に必要な遺伝子群の特定に成功した。相同性配列のみではアミノ酸の起源を特定することが困難であったが、グリシンの取り込み率がN-ヒドロキシグリシンに比較して高いことから、酵素はグリシンを基質として利用している可能性が強く示唆された。 また、もう一つのポリケタイド化合物であるlaetimycinについても、同様にゲノム解析を通じて生合成遺伝子クラスターを特定した。こちらは複数のメチル側鎖がメチオニンに由来する可能性が示唆された。放線菌では例が少ないことから、安定同位体による標識実験を予定している。 ラセミ型anteiso-メチル基を有するピロン化合物nocapyroneの生合成起源を明らかにすべく、13C標識された酢酸およびプロピオン酸の取り込み実験を行った。いずれも予想される位置への取り込みが認められた。次いで、anteiso-メチル部分の前駆体と予想される2-メチルブタン酸の両鏡像体の13C標識化合物の合成を検討し、2位メチル基を不斉アルキル化反応により導入可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの研究により、安定同位体標識化合物の取り込み実験により生合成経路を推定した二つの化合物(放線菌由来ポリケタイドalchivemycinと糸状菌由来PKS-NRPSハイブリッド化合物preussin)に関する研究成果を論文として発表した(Org. Lett. 2013および J. Nat. Prod. 2014)。本年度は、本研究で研究対象とする3つの化合物(alchivemycin, laetimycin, nocapyrone)の生産菌のゲノム解析を行い、alchivemycinとlaetimycinについては生合成遺伝子クラスターの同定に成功した。またnocapyroneについては、酢酸とプロピオン酸の取り込み様式を同位体標識実験により明らかにしており、初年度に計画した内容をほぼ実現できている。
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今後の研究の推進方策 |
生合成遺伝子クラスターを特定した二つのポリケタイド化合物alchivemycinとlaetimycinに関しては、いずれもStreptomycesの生産物であることから、まずは異種発現により推定クラスターが生産に関与することを実験的に証明する。さらにはそれぞれの化合物の特徴、すなわちalchivemycinでは構造中に含まれるN-ヒドロキシグリシンがどのように生成されるのか、laetimycinでは粘液細菌Sorangiumの生産するchlorotonil Aと何故は逆の絶対構造を生成しうるのかという点について、遺伝子比較、酵素の機能解析を検討する。またいずれも特異な新規構造を有することから、生合成遺伝子のマイニングにより同様の化合物を生産する微生物を探索し、その生産物を解析する。 Nocardiopsis属放線菌の生産するnocapyroneについては anteiso末端の側鎖メチル基がラセミ混合物であることに関して、その前駆体と予想される2-メチルブタン酸の両鏡像体の13C標識化合物を合成し、生産菌への取り込みを調べることにより、立体制御の仕組みを解明する。また生産菌ゲノムから生合成遺伝子を同定し、酵素構造の観点から立体制御について解析を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では予定していなかったゲノム解析、遺伝子組換え実験へと研究が発展したため、最終年度には本研究を支援する嘱託研究員(ポスドク)を雇用することとした。その研究員の報酬の一部を科研費から支払いたいと考え、25年度の支出を控えて未使用分を26年度へ繰り越すようにした。 平成26年度は、ゲノム解析により推定されたalchivemycinとlaetimycinの生合成遺伝子機能の解明を目的として、異種発現等の遺伝子組み換え実験を行うため、その実験費用ならびに嘱託研究員(ポスドク)の報酬として本研究費を使用する。
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