研究課題/領域番号 |
24580166
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
五十嵐 康弘 富山県立大学, 工学部, 教授 (20285159)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 二次代謝 / 生合成 / 放線菌 / 糸状菌 |
研究実績の概要 |
本研究では、医薬探索に有効な化合物ライブラリーを構築する上で有益な情報を得ることを目的に、申請者らがUVスペクトルを指標とするケミカルスクリーニングにより、放線菌や糸状菌から取得した構造的に特異な新規化合物の生合成経路の解明を試みる。 Streptomyces属の生産するalchivemycinは、デカリン骨格を有する多環性ポリケタイドである。分子中央の前例のない共役複素環系がグリシンを前駆体として合成されることを前年度までに明らかにした。また、生産菌株のドラフトゲノム解析を行い、推定生合成遺伝子クラスターを明らかにした。本年度は、ゲノムマイニングにより同様の化合物を生産する微生物を探索し、その生産物の解析を試みた。ゲノムデータベースに類似の遺伝子クラスターをもつ3株が存在していた。そのうち2株(NBRC 16556, NBRC 13981)を入手し、培養生産物を解析した所、いずれもalchivemycin Aを生産した。また、NBRC 13981株は新規類縁体を生産していた。現在はその未知類縁体の単離、構造解析を進めている。 Streptomyces属が生産するlaetimycinは、デカリン骨格に14員環ラクトンが縮環した新規ポリケタイドである。本年度はドラフトゲノム解析を行い、生産菌から生合成遺伝子クラスターを同定した。AT-less型のtype I PKSであることに加え、PKS中に3つのmethyltransferaseドメインが存在し、骨格中のメチル置換基がメチオニンに由来することが示唆された。放線菌のtype I PKSにおいて、メチル基をメチオニンから取り込む例は調べた範囲では前例がない。現在は13C標識前駆体の取り込み実験を進めている。 Nocapyrone生産菌は生産性を失い、現時点で生産の回復が見られない。そこでゲノムマイニングによる生産株の探索を試みた。ゲノムデータベース中の5株に類似の生合成遺伝子クラスターが見出されたため、それら培養したが、目的の生産菌は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で使用している放線菌2株(laetymycin生産株およびnocapyrone生産株)が抗生物質の生産能を失ったため、それらの生合成実験を計画通りに実施することができなかった。その後、laetimycin生産菌については、生産性を回復した株が得られたため、残りの実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
Laetimycin生産菌については、生産性を回復した株が得られたため、13C標識メチオニン、酢酸、プロピオン酸の取り込み実験を行い、ゲノム解析から推定されたメチオニンの取り込みを検証する。さらに生合成遺伝子の証明、生合成経路の詳細解析を行うために、形質転換系の確立を検討する。 Nocapyrone生産菌は回復の目処が立たないため、同様のピロン化合物を生産するNocardiopsis sp. SJE059株を用いた生合成研究に切り替える。SJE059株は、nocapyrone Eと同様にメチル基に関するラセミ化合物を生産する(未発表)ことから、メチル基立体制御の実験材料としてはnocapyrone生産菌に代替できると考えている。まずは13C標識した推定前駆物質の取り込み様式を解析する。その後、将来的には生合成遺伝子クラスターを取得し、立体制御機構の解明へと進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で使用している放線菌2株が抗生物質の生産能を失い、その抗生物質の生合成実験を計画通りに実施することができなかったため、未使用額が発生した。現在は、生産能力を回復した変異株が得られたため、残りの実験を再開しているが、本年度中にすべての実験を完了することは難しいことから、次年度に助成金の一部を繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
主として生合成標識実験に用いる試薬(安定同位体標識化合物、30万円)、微生物の培養に係る消耗品(培地、シャーレ等、10万円)、化合物の単離精製に係る消耗品(溶媒、HPLC交換部品等、20万円)の購入、また実験補助職員の賃金(6ヶ月、30万円)に充てる予定である。
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