研究課題/領域番号 |
24580168
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高橋 俊哉 独立行政法人理化学研究所, 連携支援ユニット, 専任研究員 (00202151)
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キーワード | バイナリンB / ビオチニル化アナログ / ヨウ化サマリウム / バンレイシアセトゲニン |
研究概要 |
1.強力なTNF-α発現制御活性を持つバイナリンBのターゲット分子探索を目的として、前年度にバイナリンBを構造モチーフにしたビオチニル化アナログを合成したが、生成物は当初の予想に反して各種溶媒に溶けず精製が困難であった。本年度に再検討した結果、加温したDMFに生成物が溶解することがわかり、この知見を基にして高極性溶媒を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーや逆層系でのHPLC精製を行いビオチン付加体の精製に成功した。さらに、ビオチンの導入位置を変えたアナログの合成と高純度精製も達成した。現在、これらの機能性分子プローブを用いて、生化学者と共同でバイナリンBのターゲット探索に向けた実験を検討中である。 2.バンレイシアセトゲニンの持つ強力な生理活性の作用機構をより明らかにするため、天然物そのものを分子プローブに改変させる研究の一環としてカムバリニンをモデルとして合成研究を行った。カムバリニンの持つ6員環エーテル部分はヨウ化サマリウムを用いる環化反応で構築可能であったが、コアを成す5員環エーテル部分を効率よく作るため、従来試みられていないジオール類の環化反応を調べた。アセト酢酸エステルや酒石酸誘導体から、cisならびにtrans-1,2-あるいは1,3-ジオール類を立体選択的に合成し、コバルト触媒を用いた末端オレフィンへの酸化的付加を検討した。基質が1,2-ジオールの場合、2種の環化モードが考えられる系においても当初の予想どおり5員環エーテルのみが生成した。1,3-ジオール類においては、2種の5員環エーテルの出来る可能性のある場合には2つの生成物が得られた。触媒による生成比の差は見られず、またcisおよびtrans-の立体化学によっても選択性は変わらない事がわかった。このため、使う基質によっては水酸基の一方を保護してから環化反応を行う方が効率的である事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度合成した分子プローブの分離・精製に手間取り、本年度のプロジェクトであるカムバリニンの全合成とそのプローブ化がまだ達成できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
バイナリンBをモデルにした機能性分子プローブの研究は、現在進めている生物試験の結果次第で分子の構造改変を行う予定である。一方、カムバリニンの全合成と分子プローブ化のプロジェクトは、コア部分を構築するための環化反応の際の問題点が浮き彫りになったので、水酸基をフリーではなく保護した状態で反応を進める事で問題点を克服しつつ早急に未合成のパーツを完成させ全合成を終了させる。ブローブ化は前年度のバイナリンBプローブ創製の際の知見があるのでこれを参考にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度未使用額がある理由は、1)バイナリンBプローブの精製に時間がかかり、カムバリニンの合成完了に必要であった高価な有機金属試薬を購入しなかったためと、2)コアの構築に必要な環化反応の進行の有無を見極めるためのモデル実験として、安価なラセミ化合物を原料に用いて合成を進めたためである。 本年度は、前年度未使用額とH26年度請求分とを合わせてカムバリニン全合成とプローブ化のための高価な有機金属試薬、ならびにGlcNAcase阻害剤の創製に必要な糖質関連試薬の購入に充てる。
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