研究課題
今年度は、体内Pls増加作用を確認しているアルキルリン脂質(AlkPL)を、アトピー性皮膚炎モデル動物(NC/Ngaマウス)に与え、体内Pls増加による皮膚TJバリア機能保護作用、病態改善作用を評価した。NC/Nga雄性マウスをアトピー性皮膚炎誘導の有無、AlkPL投与の有無(基本食とAlkPL食)により4群に分けた。アトピー性皮膚炎は、背部にダニ抗原を塗布することにより発症させた。1週間ごとに症状スコアをチェックし、3週間目に解剖を行い、腹部大動脈血、皮膚を採取した。分析は、血中・皮膚中のPls濃度および皮膚のTJタンパク質を測定した。症状スコアは餌による差は無かった。血中Pls濃度は、皮膚炎発症で有意に低下した。AlkPLの摂取で20:4(AA)が結合した分子種は有意に減少し、22:6(DHA)と20:5(EPA)の分子種は有意に増加した。皮膚中のPlsは正常群において、AlkPL食摂取による濃度の上昇は無かったが、sn-2位の脂肪酸割合は、AAとDHAが入れ替わっていた。基本食群において、皮膚炎発症で増加していた。皮膚中のTJタンパクは皮膚炎発症で基本食群において、Occludinが有意に減少、アトピーを発症させた2群ではAlkPL投与において、Cloudin-1が増加傾向にあった。以上より、皮膚炎発症で、sn-2位にAAが結合したPlsが増えたが、AlkPL摂取で、AAとDHAの入れ替えがみられ、炎症緩和の可能性が考えられる。今回、TJタンパク量に皮膚炎発症とAlkPL摂取で交互作用が見られたことより、アトピー性皮膚炎発症時にはAlkPLの摂取がTJ機能強化、症状緩和につながることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究機関の異動に伴い、当初、実験がやや遅れはしたが、分析は途中であるが2回目の動物実験に進むことができたので、おおむね順調に進んでいる。
アトピー性皮膚炎モデル動物における皮膚バリア機能に対するプラズマローゲンの影響を見るための動物飼育実験をおこなったが、今回の結果のみでは、アルキルリン脂質ではなく、アルキルリン脂質中のDHA、EPAによる影響とも考えられることから、魚油との比較を検討中である。
当該年度は、研究機関の異動に伴い、当初、実験が進まなかったため、繰越金が多くなった。平成26年度は当該年度の繰り越し金と次年度の研究費で、研究施設異動に伴う試薬や物品の不足分や新しい実験のための新規の購入を行い、研究を円滑に進めていく。
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Journal of Lipid Research
巻: Mar 10. ページ: -