生活習慣病(心臓血管性・代謝性疾患)の発症・進展に、炎症反応が重要な役割を果たしていることが明らかにされてきている。本研究では、現代人の乱れた食生活と生活習慣病との関連を明らかにするため、食生活の乱れによる炎症誘導について知見を得ることを目的とした。乱れた食生活の一つである不規則な食事(欠食やまとめ食い)の実験例として、実験動物に「絶食-復食」を施したところ、復食に伴い肝臓で炎症反応が誘導した。これまでに報告されている脂肪組織での炎症誘導は、原因となる食事成分が脂質(飽和脂肪酸)であり、TLR4シグナル経路が関与している。一方、今回明らかとなった肝臓での炎症反応にはTLR2シグナル経路が関与しており、原因となる食事成分も脂質ではなく炭水化物であることが明らかとなった。 近年、砂糖の消費量が世界的に急増していることから、砂糖を構成するフルクトースの過剰摂取による健康被害が注目されている。そこで様々な食事性炭水化物と肝臓の炎症誘導との関連について実験をおこなった。その結果、予想に反してα-コーンスターチ及びグルコースの過剰摂取が、シュクロースやフルクトースの過剰摂取よりも肝臓の炎症反応を強く誘導することが判明した。 肝臓で炎症反応が誘導される原因として、絶食に伴い肝臓でのTLR2内因性リガンドの発現量が増加すること、復食より軽度の肝傷害が生じ、TLR2内因性リガンドの細胞外への放出が促進することが示唆された。また、炎症反応と共に、肝臓でストレス応答、解毒作用、組織再生、およびがん化抑制に関連した遺伝子群の増加が認められた。 これらの結果は、脂肪組織での炎症に加えて、新たに肝臓での炎症反応が、食生活の乱れに起因した各種疾患の原因になる可能性を示唆している。
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