研究課題/領域番号 |
24580176
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
薩 秀夫 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (80323484)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トランスポーター / 腸管上皮細胞 / フルクトース / グルコース / GLUT5 / SGLT1 |
研究概要 |
近年生活習慣病の増加が社会問題となっているが、その一因として過剰な糖質の摂取が考えられる。一方栄養吸収の場である腸管上皮細胞は食品因子に最も高濃度かつ高頻度に曝されることから、その機能が食品因子により制御を受けると考えられる。そこで本研究では生活習慣病予防に向けて、腸管上皮細胞にてフルクトース及びグルコースの吸収を担うトランスポーターであるGLUT5及びSGLT1に注目し、これらの活性を抑制する食品因子の探索・解析を進めた。腸管上皮モデルCaco-2細胞におけるGLUT5及びSGLT1の発現・活性を調べたところ、GLUT5の発現及びフルクトース取込活性は確認されたが、一方SGLT1の発現はみられなかった。そこでCaco-2細胞におけるフルクトース取込活性を阻害する食品成分を約40種類のフィトケミカル類を用いて探索した。その結果、柑橘類に多く含まれるノビレチン及びタンジェレチン、また緑茶に含まれるエピカテキンガレート(ECg)が高いフルクトース吸収阻害活性を示した。またCaco-2細胞を透過性膜上に培養しフルクトース透過に対する作用を検討したところ、ノビレチン及びECgともにフルクトースの透過量を有意に阻害することが見出された。さらにヒトGLUT5発現ベクターを構築しCHO細胞に導入して安定なGLUT5高発現株を作成した。GLUT5高発現株では高いフルクトース取込活性が確認されたことからノビレチン及びECgの作用を検討した結果、いずれも濃度依存的にフルクトース取込活性を抑制し実際にGLUT5活性を抑制していることが確認された。一方グルコースの腸管吸収トランスポーターであるSGLT1についても発現ベクターを構築し、CHO細胞に導入して安定な高発現株を作成した。得られた高発現株では実際にSGLT1活性が確認され、安定なSGLT1活性評価系を構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度であるH24年度では、培養細胞株を用いてフルクトース及びグルコース取込活性評価系の構築をおこなった。その結果フルクトースについてはヒト腸管上皮モデルCaco-2細胞を用いてフルクトース取込活性評価系を確立することができ、またフルクトース及びグルコースの吸収トランスポーターであるGLUT5及びSGLT1をそれぞれ安定に発現したCHO細胞株を構築することにも成功した。 また上記Caco-2細胞を用いてフルクトース取込活性を阻害する食品因子のスクリーニングをおこない、約40種類のフィトケミカルの中から実際に3種のフィトケミカル、すなわちノビレチン、タンジェレチン、エピカテキンガレートが阻害することを新規に見出した。またこれらのフィトケミカルによるフルクトース取込活性抑制に関する特性解析を進めるとともに、その阻害メカニズムについても一部解析を始めている。また見出されたフィトケミカルによるフルクトース吸収抑制がin vivoにおいてもみられるかどうかについて、マウスなど実験動物を用いた予備実験も開始している。 以上より、本課題については現在までのところおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度にて見出されたノビレチン及びECgがGLUT5を介したフルクトース取込活性を阻害する作用メカニズムについて、さらにGLUT5との直接結合の有無などを中心に分子レベルで解析をすすめる。またこれらのフィトケミカルがin vivoにおいてもフルクトース取込活性を抑制するか、マウスなど実験動物モデルを用いて検証する。さらにフルクトース過剰投与による生活習慣病の動物モデルが報告されていることから、文献などを参考に実際にフルクトース過剰投与による生活習慣病動物モデル系、特に非アルコール性脂肪肝モデル系の構築を試みる。 一方SGLT1についてはH24年度に構築した安定なSGLT1高発現株を用いて、実際にSGLT1活性を抑制する食品因子の探索をおこなう。食品因子としてはGLUT5と同様に約40種類のフィトケミカルについて検討する予定であるが、その他野菜・果実抽出物、ペプチド・アミノ酸類、脂肪酸などの脂質類などを用いることも検討する。さらにSGLT1活性を阻害する食品因子が見出された場合にはその阻害特性に関する解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費について、消耗品として前年度同様に培養細胞を用いた実験が中心となるため、牛胎児血清をはじめ細胞培養に必要な試薬類、さらに作用メカニズムの解析のための生化学・分子生物学関連試薬などを予定している。また動物実験も予定しているため、動物及びその飼料購入への使用も予定している。一方これまで得られた研究成果を報告また引き続き情報収集のため、学会などへの参加のための旅費としての使用を予定している。また研究成果を国際誌に発表する際の投稿料や英文校閲費などをその他として予定している。
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