研究課題/領域番号 |
24580178
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
都築 巧 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50283651)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酵素 / 食品 / 遺伝子 / バイオテクノロジー / 栄養学 |
研究概要 |
マトリプターゼはアミノ酸残基855からなるII型の膜結合性セリンプロテアーゼであり、生体内において上皮完全性の維持に重要な役割を担っていると考えられている。本酵素は一本鎖前駆体のアルギニン614のカルボキシル末端で限定分解を受けるとジスルフィド結合を介して結合した二本鎖の活性型へと変換される。興味深いことにマトリプターゼ前駆体はプロテアーゼ活性を有し、活性化開裂を自己触媒的に行うと考えられている。また、マトリプターゼは触媒ドメインとステムドメインからなるモザイク型の分子である。本研究ではマトリプターゼ前駆体の活性発現機構、特に活性発現におけるステムドメインの意義を明らかにすることを目的とする。我々はこれまでCHO-K1細胞を用いてマトリプターゼの全細胞外領域を含むもの(proMAT)や触媒ドメインのみから成る組換え型マトリプターゼ(proCDMAT)を生産してきている。これらの組換え型酵素は活性化開裂部位Thr-Lys-Gln-Ala-Arg614がエンテロペプチダーゼの認識配列Asp-Asp-Asp-Asp-Lysに置換されており、これらは精製した段階では一本鎖酵素であり偽前駆体として使用することができる。本年度は基質としてacetyl-Phe-Thr-Lys-Gln-Ala-Arg-MCA(以下Ac-FTKQAR-MCA) を準備したが、proMATはこの基質を切断したが、proCDMATには切断活性がほとんどみられないことを明らかにした。このことからマトリプターゼ前駆体の活性発現にステムドメインが重要な役割を果たしているが示唆される。また、本年度はステムドメインのなかでも低密度リポ蛋白質受容体(以下LDLRA)ドメインが特に重要であることを支持する結果も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マトリプターゼは自己触媒的に活性化されることが知られていたが、マトリプターゼ前駆体が触媒活性を示し、さらにその触媒活性発現にステムドメインが重要な役割を果たしていることを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
マトリプターゼ自己活性化においてステムドメインが重要な役割を果たしていることが明らかになった。平成25年度以降はマトリプターゼ前駆体が合成基質だけではなく高分子基質(例えばマトリプターゼの活性中心のセリン残基をアラニンに置換したもの。以下S805A-proMAT)に対しても触媒活性を示すかどうかを明らかにしたい。また、その活性に対する食品成分の影響について明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者らがこれまでに得たデータから、CUBドメインはマトリプターゼ偽前駆体活性に阻害的に働き、反対にLDLRAドメインは促進的に働いていることが明らかになった。そこで例えばLDLRAドメインと触媒ドメインから構成されるマトリプターゼ偽前駆体(ΔCUB-proMAT)によるAc-FTKQAR-MCA加水分解、S805A-proMAT切断をCUBドメインだけからなるコンストラクトが阻害するかについて検討する。またCUBドメインのなかでマトリプターゼ偽前駆体活性阻害に重要な領域がわかればそれに対応するアミノ酸20残基程度からなるペプチドを複数合成し、そのものがΔCUB-proMATによるAc-FTKQAR-MCA加水分解、S805A-proMAT切断を阻害するかについて検討する。
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