研究課題/領域番号 |
24580179
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
芦田 久 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (40379087)
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研究分担者 |
福澤 秀哉 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (30183924)
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キーワード | ヘテロオリゴ糖 / ビフィズス菌 / グリコシダーゼ / プレバイオティクス |
研究概要 |
24年度には、畜産廃棄物であるブタ胃ムチンから組換えエンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼを用いてビフィズス菌増殖活性のあるヘテロ2糖Galβ1-3GalNAc(ガラクト-N-ビオース)を遊離・調製する方法を確立した。25年度には、ブタ胃ムチンにBifidobacterium bifidum由来の組換えラクト-N-ビオシダーゼを作用させたところ、同様の生理活性をもつヘテロ2糖Galβ1-3GlcNAc(ラクト-N-ビオース)が遊離することを見出した。Galβ1-3GlcNAcβ1-R構造は1型糖鎖と呼ばれ、ヒトミルクオリゴ糖や糖脂質糖鎖に存在が知られているが、胃ムチンのO-グリカンにもかなりの量が含まれていることが明らかになった。 ラクト-N-ビオシダーゼについては、25年度に共同研究者らにより結晶構造解析が明らかにされ、J. Biol. Chem.に論文が掲載された。また、既知のラクト-N-ビオシダーゼ遺伝子をもたない B. longum subsp. longum から全く新奇のラクト-N-ビオシダーゼ遺伝子をクローニングし、共同研究者とともにJ. Biol. Chem.に論文を発表した。 胃ムチンの糖鎖末端には、胃ムチンに特異的はGlcNAcα1-4Galβ1-R構造が存在する。この糖鎖構造はピロリ菌の増殖を阻害し、天然の抗菌成分であることがわかっている。ウェルシュ菌由来の組換えエンド-β-ガラクトシダーゼ(Endo-β-Gal-GnGa)を作用させてピロリ菌阻害活性が期待できるヘテロ2糖GlcNAcα1-4Galの調製も試みた。 以上のとおり、ブタ胃ムチンから特異的な酵素を利用することで、Galβ1-3GalNAc、Galβ1-3GlcNAc、GlcNAcα1-4Galの3種の生理活性ヘテロ2糖を遊離・調製できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究分担者による、糖転移活性の向上したエンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼの変異体酵素の作成については大きな進展が見られなかった。そこで本酵素を用いた方法の探索は中断し、26年度には研究分担者から外れていただくことにした。 一方、ラクト-N-ビオシダーゼを胃ムチンに作用させたところ、Galβ1-3GlcNAc(ラクト-N-ビオース)が遊離することを見出した。これは当初計画にない結果であるが、胃ムチンがラクト-N-ビオースの供給源となることを明らかにした点で重要な進捗である。 ラクト-N-ビオシダーゼについては25年度に結晶構造が明らかにされたため、変異導入により糖転移活性の上昇した変異体酵素の作成に取りかかっている。また、胃ムチン糖鎖に含まれる第3の生理活性ヘテロ2糖であるGlcNAcα1-4Galの調製方法を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
還元末端がフリーのラクト-N-ビオースは熱に対して不安定であるため、ラクト-N-テトラオース(Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)、あるいはGalβ1-3GlcNAcβ1-3Galなどの3糖を合成できれば加工食品への添加も容易になる。そこで、結晶構造が明らかにされたラクト-N-ビオシダーゼの活性中心に点変異を導入して、胃ムチンから糖転移反応により4糖ないしは3糖の形で回収する方法を検討する。また、組換え酵素ではなく微生物菌体を用いて各種ヘテロ2糖を調製する方法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
端数を使い切れなかったため。 160円の繰越金が生じたが、次年度の物品費に充当する。
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