オボアルブミンは卵の加工特性を特徴付ける重要な食品タンパク質であり、凝集体形成やゲル化のモデルとして研究されてきた。そこで、検討されてきたこれまでのもでるは、オボアルブミン分子を球体で表した解像度の低いものであったが、現在では、本タンパク質や類縁タンパク質のX線結晶構造解析が進められ、各アミノ酸残基の位置や、側鎖の方向を反映した高解像度での分子モデルが構築できる条件が整ってきた。そこで、本研究では、凝集体形成の実態を明らかにするために、その初期に生成すると考えられるオリゴマー(二量体や三量体など)を分離精製し、X線結晶構造解析によりその立体構造を明らかにし、それを核として凝集・組織化の進むプロセスについての、原子レベルでの理解を目的としている。実際には、二量体や三量体の生じやすい条件を検討し、陰イオン交換カラムや、ゲル濾過クロマトグラフィーによる単離精製・結晶化を試みてきた。 また、オリゴマーの形成過程での、加温の結果として、熱安定性の著しく上昇した分子種、S-オボアルブミンの生成している可能性が出て来たので、この分子の特性を明らかにする目的で、分子表面に存在するセリン残基のラセミ化、D-化の可能性を検討し、考察した。
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