研究課題/領域番号 |
24580184
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
伊東 秀之 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70253002)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / エラジタンニン / ビフィズス菌 / 整腸作用 / プレバイオティクス / ポリフェノール |
研究概要 |
ゲンノショウコはGeraniinを主とするエラジタンニンを多量に含み,日本三大民間薬の一つで整腸薬として古くから使用されているが,その整腸作用機序に関しては,腸内細菌への影響を含めて未だ明確な科学的データが提供されていない。まず本研究ではゲンノショウコの煎じ方による腸内細菌への影響を検討するために,短時間および長時間煎液について,in vitro 実験系評価によってB. longum菌の生存維持作用の評価を行った。 B. longum JBL01株をMRS培地で前培養し,被験サンプルを添加したGAM培地に移植した。これを37℃,嫌気的条件下で培養し,12時間後及び24時間後に培養液を採取して菌数を測定した。サンプル無添加をコントロールとし,菌数の減少度を比較検討することにより,被験サンプルによる菌の生存維持作用を評価した。 ゲンノショウコの短時間および長時間煎液について,B. longumの生存維持作用を比較した結果,長時間煎液の方が強い作用を示した。ゲンノショウコ長時間煎液中には,corilaginが多く含まれていることを確認し,さらにcorilaginがゲンノショウコ成分の中でも最も強い生存維持作用を有することも見出し,corilaginをはじめとするエラジタンニンがゲンノショウコの整腸作用に大きく関与している可能性が示唆された。各種民間薬の整腸作用機序は,腸の蠕動運動の制御や,タンニン成分などが腸粘膜のタンパク質と結合することによって生ずる腸粘膜の保護,抗炎症によるものと推察されているが,整腸作用への寄与が考えられる腸内細菌に対する影響については,ほとんど報告が見当たらない。本研究の結果から,ゲンノショウコに含まれるエラジタンニンが,腸内有用菌の減衰期における生存維持作用を介して,素材の整腸作用に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸内有用菌のB. longumの生存維持作用の評価方法を確立することができた。整腸作用を目的とした民間薬のゲンノショウコの煎じ方の違いによってB. longum菌の生存維持作用が異なること,また煎じ方によるエラジタンニン成分の組成の違いについて比較検討し,成分組成と生存維持作用の相関関係を見出すことができた。以上のデータから次年度以降のさらなる他の素材についての検討や,in vivo実験系における評価にも繋がる結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
腸内有益菌のLactobacillus gasseri 菌についてもB. longum菌培養と同様の条件でアッセイを行い,エラジタンニン高含有素材について菌の減衰抑制作用を評価する。 B. longum菌の増殖期における菌数を比較することにより,従来プレバイオティクスの開発で指標とされている有益菌の増殖作用も同時に評価できる.一方,菌の発酵の際,Bifidobacterium属菌は,主に乳酸および酢酸を,Lactobacillus属菌は,主に乳酸を産生することが知られているので,本アッセイにおいて,培養24時間後の乳酸および酢酸を短鎖脂肪酸産生量の指標として定量する.定量方法は,電気化学検出器を利用したHPLC分析により行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物(SD系雄性ラット8週齢):20万円 嫌気培養試薬:35万円 プラスチック器具,溶媒:40万円 HPLCカラム(脂肪酸定量用):5万円
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