研究課題/領域番号 |
24580184
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
伊東 秀之 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (70253002)
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キーワード | エラジタンニン / 腸内細菌 / ビフィズス菌 / プレバイティクス / Pomegraniin / Pomegralignan |
研究概要 |
腸内フローラのバランスの乱れは様々な疾病発現などに関連し,フローラの正常化はヒトの健康に有益な効果をもたらすとされている。腸内環境を改善するものとして,難消化性食品成分のプレバイオティクスが知られているが,プレバイオティクスの評価は,通常有用菌の増殖を目標としている。前年度の研究では,腸内有用菌のひとつであるBifidobacterium longumの減衰期に注目し,整腸薬として用いられているゲンノショウコの短時間煎液および長時間煎液について有用菌の生存維持作用を検討した結果,長時間煎液に生存維持作用を有することを見出した。さらにゲンノショウコと同様に整腸薬として用いられているザクロの主ポリフェノール成分であるpunicalagin およびpunicalinについてもB. longumの生存維持作用の検討を行ったところ,punicalinに顕著な生存維持作用が示された。以上の結果から,本年度は有用菌の生存維持作用を有するザクロ成分の探索を行うために,ザクロ果皮および果肉(アリル)部分のポリフェノール成分の精査を行った。ザクロ果肉を70% 含水アセトンでホモジナイズを行い,濃縮後,Diaion HP-20 に続き Toyopearl HW-40 カラムクロマトによる分離,精製を繰り返し,既知エラジタンニン2量体のoenothein Bおよびeucalbanin B,3量体のeucarpanin T1 を同定すると共に,新規エラジタンニン4量体および5量体も単離,構造解明し,それぞれpomegraniin A および pomegraniin Bと命名した。ザクロに既知エラジタンニン2量体および3量体を含むエラジタンニンオリゴマーが存在することを本研究により初めて見出し,これらオリゴマーが各種市販ザクロジュースに含まれていることも明らかにした。さらにザクロの産地や成長過程において,エラジタンニンの成分組成が異なることも認めた。今後,ザクロの機能性を検討するには,今回明らかにしたエラジタンニンオリゴマーも評価する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲンノショウコと同様に整腸薬として用いられているザクロの主ポリフェノール成分についてもB. longumの生存維持作用の検討を行ったところ,punicalinに生存維持作用が示されたことから,ザクロに含まれる他のポリフェノール成分についても探索を行った。その結果,今までにザクロから報告が無かったエラジタンニンオリゴマーを含めて既知ポリフェノール成分6種および新規エラジタンニンオリゴマー2種を単離することができ,ザクロに含まれる有用菌の生存維持作用を有する成分の探索研究に繋がるデータが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
整腸薬として用いられているザクロのポリフェノール成分の探索を行った結果,今までに存在が知られていなかったエラジタンニンオリゴマー3種を含む6種の既知ポリフェノール成分を同定し,さらに新規エラジタンニンオリゴマー3種を単離,構造解明した。これら明らかにしたポリフェノールについて,さらにB. longumの生存維持作用の検討を進めると共に,有用乳酸菌のLactobacillus属菌についても生存維持作用の評価を行う。前年度ゲンノショウコの煎液に有用菌の生存維持作用が示されたことから,in vivo実験系においてもさらに検討を加えて,ゲンノショウコの有する整腸作用のメカニズムの一端を解明する。
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