研究課題/領域番号 |
24580185
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
田中 保 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (90258301)
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研究分担者 |
徳村 彰 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00035560)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | phospholipid / lysophosphatidic acid / phosphatidic acid / anti-ulcer / ceramide-1-phosphate / apoptosis / prostaglandin E2 / cyclooxygenase 2 |
研究概要 |
消化管が食物と接触しない時間が長く続くと、粘膜の萎縮や脱落が起こる。このことから、食物やその消化物には消化管粘膜の維持に関わる因子が存在すると考えられる。本年度では植物性食品に多く含まれるホスファチジン酸(PA)とその消化物・リゾホスファチジン酸(LPA)について抗潰瘍効果を調べ、作用メカニズムを調べた。また、植物脂質に含まれる活性リン脂質、フィトセラミド-1-リン酸の生理作用についても調べた。 アスピリン誘導性胃潰瘍モデルマウスにおいてLPAおよびPAの前投与は有意に潰瘍形成を抑制した。このとき、トリグリセリド、ジグリセリド、遊離脂肪酸およびホスファチジルコリンは全く効果をもたないかほとんど効果をもたなかった。興味深いことに、LPAよりもPAの方が高い効果を示し、PAは胃においてLPAに変換されていることがわかった。一方、免疫染色により2型LPA受容体が胃粘膜の表層粘液細胞に発現していることが判明し、PAの消化によって生じたLPAがこの受容体に作用して何らかの作用を及ぼしていると考えられた。LPA2を発現している胃由来の株化細胞を用いてLPA作用について調べた結果、LPAはCOX2のmRNAをアップレギュレートすることが明らかとなり、LPAによるPGE2産生増強が抗潰瘍効果のメカニズムの1つとして浮上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は主にホスファチジン酸(PA)の胃内消化と生理作用について検討を行った。これまで、リン脂質消化は十二指腸以降でおこると考えられてきたが、PAのLPAへの消化は胃で起こっていること、PAには抗潰瘍効果があること、このメカニズムの1つにはプロスタグランジンの産生増強が関わる可能性を明らかにできた。一方、新規植物性活性リン脂質のフィトセラミド-1-リン酸(PC1P)およびPAに見出している作用の機序についてほとんど検討ができなかった。PC1Pについては作用よりも生成プロセスの解明に時間とエネルギーを割いたためである。また、PAの培養細胞を用いた検討においては、LPA2発現細胞において細胞遊走、増殖、抗アポトーシス、リン脂質分泌などをLPA作用として予測したが、いずれの作用もないか、ほとんどみられなかったことに起因する。先入観にとらわれることなく解析を進めることが肝要と痛感した。
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今後の研究の推進方策 |
ホスファチジン酸(PA)の抗胃潰瘍効果はアスピリン潰瘍モデルにてPA食とPA欠乏食の効果を確認する。このことで植物脂質としてのPAが消化管粘膜維持に関与していること示す。さらにリゾホスファチジン酸(LPA)のプロスタグランジンE2増強作用をLPA2発現培養細胞にて確認する。また、シクロオキシゲナーゼ2誘導がin vivoで起こるかどうかについて、免疫染色を用いた解析を行う。 一方、PAやフィトセラミド-1-リン酸の培養細胞系にて見られた生理作用についてはその機序を解明する。まず、作用機序を解明するための実験系を構築し、その後、阻害剤の影響や構造活性相関を調べ、その機序についての知見を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
脂質生化学会、生化学会にてホスファチジン酸(PA)の抗潰瘍作用とその機序について発表を行う。また、FASEB meetingにてフィトセラミド-1-リン酸(PC1P)の生合成とその生理作用に関する発表を行う。このための旅費に35万円を使用する。のこりの95万円はすべて消耗品代に充てる。内訳は、動物実験用に40万円、免疫染色に20万円、培養細胞を用いた解析に35万円とする。次年度への繰越額は脂質抽出用有機溶媒に使用する予定である。
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