平成25年度はJS51とSF10という二つの菌株からコラーゲン分解酵素(COLase)を精製した。平成26年度はCOLaseの生化学的諸性質、基質特異性を調べた。また、SF10から部分精製した酵素(以後、SF10-COLaseとする)をローストビーフ用牛肉に添加し、軟化作用の評価を行った。 加工肉は出荷される前に最低でも60~70℃で加熱処理される必要がある。そこで酵素の熱安定性を調べた。60℃30分間の加熱によってSF10-COLaseは約90%、JS51-COLaseは約70%失活した。70℃30分加熱では両酵素とも完全に失活していた。60℃加熱でSF10-COLaseはほぼ失活していたことから、SF10-COLaseは加熱制御しやすい酵素であることがわかった。耐塩性については両酵素とも塩濃度が上がるにつれて徐々に酵素活性が低下していったが、加工肉に用いる塩漬け液中の塩濃度に相当する1.5M NaCl存在下では十分な酵素活性を保持していたことから、SF10-COLase、JS51-COLase共に塩漬け工程でも働くことが示唆された。酵素の基質特異性について調べたところ、両酵素ともコラーゲンとミオシンを同程度分解した。パパインなど従来の食肉軟化酵素は、コラーゲンよりもミオシンを強く分解することから、SF10-COLaseとJS51-COLaseは従来の食肉軟化酵素と比べて、コラーゲンへの親和性が高いプロテアーゼであることが示唆された。 SF10-COLaseの酵素液 (0.1%、186U/mL)を牛肉塊(アウトサイドフラット)約300gに60mLインジェクションし、4℃で5日間インキュベートし、その後せん断強度測定を行った。試験区と対照区の肉は破断応力がほぼ等しい値であったが、破断点の歪率は対照区が70.8%であったのに対し、試験区は76.2%であり、SF10-COLase処理によって肉が柔らかくなることが示された。
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