研究課題/領域番号 |
24580187
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
海老原 清 愛媛大学, 農学部, 教授 (90036492)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レジスタントスターチタイプ4 / 回腸ブレーキ / 結腸ブレーキ / インクレチン / 耐糖性作用 |
研究概要 |
レジスタントスターチとは、「ヒトの消化酵素によって消化されないデンプン」であり、タイプ1~5(RS1~5)の5タイプに分類される。私は、タイプ4(RS4)すなわち化学修飾デンプン(加工デンプン)に耐糖性改善効果、すなわち、タイプ2型の糖尿病発症抑制効果のあることを見いだしている。消化されずに回腸や結腸に到達した未消化の糖質や脂質はインクレチンの分泌を促進することが知られている。インクレチンは消化管ホルモンであり、消化管の運動を制御するとともに、膵臓からのインスリンの分泌を促進することが知られている。臨床の場でも、糖尿病の治療にインクレチンを利用することが行われている。 実験にはラットを用い、RS4には広範に加工食品に利用されているヒドロキシルプロピル化タピオカデンプン(HPTS)を用いた。広範に用いられ、ラットの実験飼料として推奨されているAIN93組成粉末飼料に、HPTSが5%になるように添加した飼料を与え、4週間飼育し、実験最終日に門脈より採血した。門脈血中のインクレチンの濃度はHPTS添加飼料摂取により、有意に増加した。 ヒトがHPTSを摂取する場合は、加工食品を通してであり、調理の過程を経ている。先の実験では、原料としてのHPTSを用いており、ヒトが摂取する形態とは明らかに異なっている。調理の過程を経ることにより、HPTSのインクレチン分泌促進効果は左右されるかもしれない。そこで、HPTSを40または20%含むパンを作り、それを粉末化後、AIN93組成飼料に添加し、ラットに与え、4週間飼育し、実験最終日に門脈より採血し、門脈血中のインクレチン濃度は、HPTS無添加のパンを与えた場合よりも明らかに増加した。 RS4であるHPTSにインクレチン分泌促進作用が確認され、このことがRS4の耐糖能改善効果に関連していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レジスタントスターチ・タイプ4(RS4)の一種であり、広範に食品加工の場で用いられているヒドロキシプロピル化デンプン(HPTS)にインクレチン分泌促進作用のあることを明らかにできるとともに、HPTSが食品加工の過程を経てもインクレチン分泌促進作用を維持していることが明らかにできた。 結腸における作用(結腸ブレーキ)に腸内細菌により生成される短鎖脂肪酸の関与が推定された。まだ、短鎖脂肪酸関与を確証するに至っていないが、推定できたことは大きな成果である。 回腸における作用(回腸ブレーキ)は、HPTSにより回腸に多くの脂肪、デンプンが達しており、回腸でのインクレチン分泌促進作用は、HPTSによる脂肪、デンプン消化速度の遅延によることであることを明らかにできた。 HPTSは粘性を示すRS4であり、この粘性が回腸におけるインクレチン分泌促進作用に重要な要素であることが 明らかにできた。 また、加工食品に応用した場合にもインクレチン分泌作用は失われることなく、むしろその作用を増強することも明らかにできた。動物実験からヒトへの応用へ一歩であるが、進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
レジスタントスターチ・タイプ4(RS4)には、種類としては11種類だが、加工の程度を変えると無数に近い。昨年は、食品加工の場で一番效範に用いられているヒドロキシプロピル化デンプンを用いたが、本年は他のRS4のインクレチン分泌促進作用の有無、強さについて検討する。RS4は、加工様式により、同じデンプンでも水溶性、不溶性に加工でき、RS4の物理的特性の面からもインクレチン分泌に対する影響を検討できるので、この点についても検討していく。RS4の一部は小腸を未消化で通過していくが、未消化部分は小腸に物理的、化学的刺激を与えていくはずである。このことが、インクレチン以外の消化管ホルモン分泌に関与していることも十分に考えられるので、付則的ではあるが、他の消化管ホルモン分泌に対するRS4の影響も検討していく。他の消化管ホルモンと共同してインクレチンは耐糖性改善効果に関与しているかもしれないので。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物、試薬、投稿論文投稿費用
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