研究課題/領域番号 |
24580187
|
研究機関 | 大阪青山大学 |
研究代表者 |
海老原 清 大阪青山大学, 健康科学部, 教授 (90036492)
|
キーワード | レジスタントスターチ・タイプ4 / インクレチン / GLP-1 / 回腸ブレーキ / 結腸ブレーキ |
研究概要 |
レジスタントスターチとは、「ヒトの消化酵素によって消化されないデンプン」であり、タイプ1~5の5タイプに分類される。私は、タイプ4(RS4)すなわち化学修飾デンプン(加工デンプン)に耐糖性改善効果、すなわち、タイプ2型の糖尿病発症抑制効果のあることを見いだしている。消化されずに回腸や結腸に到達した未消化の糖質や脂質はインクレチンであるグルカゴン様ペプチドー1(GLP-1)やペプチドYY(PYY)の分泌を促進することが知られている。GLP-1、PYYは消化管ホルモンであり、消化管の運動を制御するとともに、膵臓からのインスリンの分泌を促進することが知られている。臨床の場でも、糖尿病の治療にGLP-1を利用することが行われている。GLP-1の分泌には回腸ブレーキが強く関与している。実験にはラットを用い、RS4には水溶性で粘性を示すヒドロキシルプロピル化タピオカデンプン(HPTS)と不溶性のリン酸架橋デンプン(DPTS)を用い、RS4の物性とインクレチン分泌の関連について検討した。AIN93組成粉末飼料に、HPTS、DPTSが5%になるように添加した飼料を与え、4週間飼育し、実験最終日に門脈より採血した。門脈血中のGLP-1の濃度はHPTS添加飼料摂取により、有意に増加したが、DPTSでは増加が認められなかった。RS4のGLP-1分泌促進作用には、RS4の物性、特に粘性が重要な要素であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レジスタントスターチ・タイプ4(RS4)の一種であり、広範に食品加工の場で用いられており、水溶性で粘性を示すヒドロキシプロピル化デンプン(HPTS)と不溶性のリン酸架橋デンプン(DPTS)のグルカゴン様ペプチ ドー1(GLP-1)分泌促進作用について物性の面から比較検討を行い、分泌促進には、物性、とくに粘性が重要 であることを明らかにできた。GLP-1の分泌には、回腸ブレーキ、すなわち、脂肪、たんぱく質、デンプンの一部が回腸にまで未消化で運ばれ、回腸で消化されて生成される脂肪酸、アミノ酸、グルコースがL細胞を刺激することが必須である。HPTSのGLP-1分泌促進作用は、脂肪、たんぱく質、デンプンの消化部位の空腸から回腸への拡大によるものであり、粘性が重要な要素であることが明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
レジスタントスターチ・タイプ4(RS4)の一種であるヒドロキシプロピル化デンプン(HPTS)にGLP-1分泌促 進作用があり、その作用には粘性が重要であることを明らかにできた。しかし、粘性とGLP-1分泌促進作用に関して の詳細は不明である。RS以外で粘性を示す不消化物で粘性を示すもの、例えば水溶性食物繊維との比較をし、GLP-1 分泌促進作用における不消化物の粘性の役割について検討する。また、HPTSのGLP-1分泌促進作用が、単に粘性による未消化部分の回腸への運搬に依るのか、HPTSそれ自体の物理的、化学的刺激に依るのかは明らかにされてはいない。このことが、GLP-1分泌に関与していることも十分に考えられるので、この点についてもも検討していく。
|