レジスタントスターチ-タイプ4(RS-4)は小腸で消化酵素によって消化されないデンプンの一種で、加工デンプンとしてこれまでに流通してきおり、各種の食品に物性改良を目的に利用されてきている。RS-4は食物繊維に類似した生理効果を有していることが知られている。24、25年度の研究から、RS-4のインクレチン分泌促進による耐糖性改善効果は、大腸で腸内細菌の働きにより生成される発酵産物である短鎖脂肪酸の関与によることが明らかになった。 そこで、短鎖脂肪酸の関与をより明確にするために、各種の食物繊維、RS-4(全部で14種類)をラットに与え、発酵性とインクレチン(GLP-1、PYY)分泌の関係を検討したところ、盲腸内容物中の短鎖脂肪酸量と門脈血中のGLP-1、PYY濃度には強い正の相関性が認められた。 次に、盲腸切除ラットを用いインクレチン分泌に対するRS-4の影響を検討した。ラットでは盲腸は腸内細菌が働く主要な場である。盲腸切除により、門脈、腹部大動脈血中のインクレチン(GLP-1、PYY)は、明らかに低下した。腹部大動脈血中のインクレチン濃度は低下したが、その低下の度合いは、PYYよりもGLP-1で大きかった。 RS-4を含む、含まない飼料を与え、飼育期間中に投与する飼料を変えることにより、RS-4のインクレチン分泌促進効果を検討したところ、RS-4含む飼料をあらかじめ与え、その後含まない飼料に変えたところ、インクレチンの分泌量は明らかに低下した。一方、RS-4含まない飼料をあらかじめ与え、その後含む飼料に変えたところ、インクレチンの分泌は明らかに増加した。 以上のことより、RS-4のインクレチン分泌作用には、RS-4の発酵産物である短鎖脂肪酸が関与し、同時に腸内細菌叢の変化、すなわち腸内細菌の質と量が重要であることが明らかにされた。
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