これまでの本研究によって、コラーゲンが、マクロファージのサイトカイン産生や貪食を活性化することを明らかにし、その活性化機構は、TLR4経路によるNF-κBの核移行の促進に加え、MAPキナーゼの一種であるJNKの活性化、さらにマクロファージの活性化に抑制的に作用するPPARγ1の発現抑制であることを明らかにした。そこで本年度は、もう一つの抗原提示細胞である骨髄由来樹状細胞に対する効果について検討した。マウス大腿骨から骨髄細胞を回収し、顆粒球単球コロニー 刺激因子を添加した培地で培養することにより、樹状細胞へと分化誘導した。樹状細胞に分化したことは、形態的な変化に加え、MHC-II とCD11cの発現により確認した。得られた骨髄樹状細胞に対して、クラゲから抽出したコラーゲンを作用させたところ、TNF-α、IL-6、IL-1β、およびIL-12産生が顕著に促進された。この産生促進は、遺伝子発現の活性化によるものであることが明らかになった。さらに、コラーゲン処理により、樹状細胞への分化誘導、および成熟が促進されることが明らかになった。これらの結果から、コラーゲンは自然免疫応答において、マクロファージだけでなく、樹状細胞に対しても活性化およびサイトカイン産生を促進することが明らかになった。 これまでに得られているコラーゲンの獲得免疫系に及ぼす促進効果と、3年間の本課題研究で得られた成果をまとめると、コラーゲンは、獲得免疫系だけでなく、自然免疫系も活性化し、免疫系全体を活性化する効果を持つことが明らかになった。 さらに、感染症に対するコラーゲンの効果を検討した。ヒラメの滑走細菌症、およびブリ類の結節症に対するクラゲコラーゲンの耐病性付与効果を検討した。その結果、両試験において顕著な生存率の向上が認められ、コラーゲンの摂取が実際の感染症に対する抵抗性に繋がることが明らかになった。
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