研究課題
本研究では、ヒト肝臓モデルHepG2細胞を用いたin vitro実験系や、マウスやラットを用いたin vivo実験系により、新規機能性脂質が病態発症に及ぼす影響について検討した。今回は、ヒト肝臓モデルHepG2細胞を用い、各種極長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸が細胞内新規脂質合成に及ぼす影響について検討を行った。本実験において用いた脂肪酸50μM濃度の添加は細胞増殖に阻害をもたらさないことを確認して実験を進めた。結果、オレイン酸前培養により上昇した細胞内脂質合成が、各種極長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸添加により有意に抑制されることが確認され、炭素数と不飽和度の程度に比例して作用が強いことが示された。細胞内脂質合成関連遺伝子の発現に対する影響も同様な傾向が認められたことから、今後はより鎖長が長く不飽和度が高い極長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の合成が望まれる。そこでin vivoにおける極長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の生理作用を確認するために、動物実験において各種脂肪酸(炭素数・二重結合数が異なるもの)を比較検討した。その結果、どの極長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸摂取群にも肝臓脂質濃度低下が認められ、脂肪肝の改善作用が示された。その作用機序としては、どちらも肝臓の脂質合成に関与する酵素活性の抑制が示された。また、善玉アディポサイトカインであるアディポネクチンの血中濃度上昇も示された。これらの生理作用の強さに関してもin vitro実験系での作用と同様に、炭素数と不飽和度の程度に比例していることが示された。以上のことから、新規機能性脂質の創製において、極長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸の炭素数や不飽和度を高める施策が、機能性付与・強化に重要であることが示された。
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