研究課題/領域番号 |
24580194
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
渡辺 達夫 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10210915)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | TRP受容体 / 温度感受性 / 食品成分 |
研究概要 |
温度感受性TRP受容体のうち、「暖かい」という温度域で活性化されるhuman TRPV3の遺伝子を取得し、リポフェクション法によりHEK293細胞に遺伝子導入し、抗生物質による選抜を複数回実施して、TRPV3を安定的に発現した細胞を樹立した。また、ヒトTRPV2での実験系として、安定発現細胞ではなく、一過的発現細胞にて活性化物質の検討ができることを確立した。 In vivo試験としては、培養細胞にてTRPA1の強い活性化物質であることを見出している1'-Acetoxychavicol acetate(ACA)のマウスにおける混餌投与試験を実施した。投与するためにACA合成し、ラセミ体を得た。天然のACAはS-体であるため、ラセミ体とS体のTRPA1活性を培養細胞で比較検討した。ラセミ体はS体と同等の活性を示したことから、ラセミ体をそのまま、肥満を誘発する高脂肪高ショ糖(HFS)食に0.025と0.050%の濃度で添加し、一ヶ月間マウスに給餌した。摂取カロリーは等しかったが、腎周囲と精巣上体周辺ならびに腸間膜の白色脂肪組織は、ACAの添加により有意に蓄積量が減少した。また、肩胛骨間の褐色脂肪組織中の産熱蛋白質であるUCP1含量がACA群で増大した。これらのことからACAは脂肪蓄積の抑制作用を示すことが明らかとなった。また、TRPM8野活性化成分メントールと、TRPM8特異的活性化成分WS-12を用いて、同様の給餌試験を実施し、TRPM8活性化成分の肥満等への影響を検討した。メントールとWS-12をそれぞれHFS食に添加し、一ヶ月間給餌した。カロリー摂取は等しく、体重にも差は見られなかった。内蔵脂肪組織重量はWS-12の添加で影響を受けなかった。しかし、HFS群で見は血中グルコース値が高値を示したが、メントールならびにWS-12添加群では低下し、高血糖の改善効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPV3遺伝子の取得は達成できたが、予定していたTRPV4遺伝子は取得できなかった。しかし、H25年度に予定していたTRPV3を安定的に発現した細胞は今年度に樹立することができた。また、TRPM8活性化成分の探索も実施できなかった。しかし、平成25年度以降に予定していた、時間と手間を要する、温度感受性TRP受容体を活性化する成分の動物試験は、昨年度先行して2例実施することができた。これらのことから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
温度感受性TRP受容体のうち、TRPV4遺伝子を取得し、安定的発現細胞を樹立するか、一過性発現系にて試験できる実験系を確立する。クローニングに成功したら、抗生物質耐性遺伝子を組み込んだベクターを用いてhuman embryonic kidney (HEK) 293細胞や、Chinese hamster ovary (CHO)細胞などに 遺伝子導入試薬を用いて形質転換させて一過性の発現細胞としてそのまま用いるか、抗生物質存在下で細胞を培養して、human TRPsを発現している細胞を選択し、安定的にTRPsを発現する細胞を選別していく。 また、TRPV3, TRPV4, TRPM8に対するアゴニスト活性を有する食品と活性化化合物の単離・精製・同定を進める。温性および涼性食品を中心にスクリーニングを行う。温度感受性TRP受容体発現細胞を96穴マイクロプレートで培養し、セルベースアッセイワークステーションFLEX station IIにて受容体活性を測定しながら、溶媒抽出と各種クロマトグラフィーを用いて、受容体活性化成分の単離を行い、NMR、MS等の機器分析を用いて、化合物の同定を行う。 さらに著効を示した化合物については、動物でのin vivoアッセイを実施し、エネルギー消費等への影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子の取得と、細胞の培養が研究の主要部分をしめるため、細胞培養と遺伝子操作用試薬代として40万円を見込んでいる。その他、培養用機材に30万円、その他試薬に20万円、ガラス器具代として10万円、実験動物代として20万円を予定している。その他、成果発表のための学会への参加旅費を10万円見込んでいる。
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