研究課題/領域番号 |
24580195
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
山下 広美 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (70254563)
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研究分担者 |
木本 真順美 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (40108866)
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キーワード | 骨格筋 / 酢酸 / 脂肪燃焼 / AMPK |
研究概要 |
醸造酢の主成分である酢酸を継続的に摂取すると骨格筋などの組織に速やかに吸収されてAMPKを活性化し脂質代謝を促進することを示唆してきた。また昨年度の研究では、酢酸を4週間摂取させた場合また酢酸に加えて運動を負荷した動物における骨格筋性状について比較した。本年度の研究では、約3ヵ月間の長期酢酸摂取が骨格筋性状に及ぼす影響について検討した。5週齢のSD系雄性ラットを3週間の予備飼育後、水投与群(water群)および酢酸投与群(ace群)の2群に無作為に分けた。water群には蒸留水(5ml/kg BW)を、ace群には酢酸(1 vol%, 5ml/kg BW)を1週間に5日間胃ゾンデ法により約3ヶ月間投与した。飼育期間中に体重および摂餌量の測定、ならびに小動物代謝計測システムによる代謝測定を行った。投与期間終了後に運動耐久性試験(15m/minから2m/minずつ3分ごとに速度を増加させるプログラム)を行い、運動継続時間および運動中の燃料利用率について解析した。その後解剖して骨格筋を採取し、ミオシンATPaceの活性染色(pH4.6) により筋線維タイプの解析、ならびに定量的リアルタイムPCR法により筋線維関連遺伝子の発現解析を行った。ラットに酢酸を摂取させたace群では、water群と比較して飼育期間中に体重増加抑制傾向が見られた。運動耐久性試験における運動継続時間は、ace群で長い傾向があり、最大酸素摂取量は有意に高かった。運動耐久性試験中の燃料利用率について解析すると、ace群ではwater群と比較して脂肪を利用する率が高い傾向が見られた。骨格筋の切片染色による筋線維タイプの解析の結果、ace群の腓腹筋でタイプI線維が有意に増加し、ヒラメ筋では増加傾向であった。遺伝子発現を解析すると、腓腹筋においてace群でMHCIおよびチトクロムCの発現量が高い傾向であった。以上のことから、酢酸摂取により骨格筋における遅筋線維の割合が増加し、脂質代謝が促進されると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、酢酸の骨格筋における作用に焦点を絞り、以下の(1)~(4)を目的としている。即ち、(1)ラットに酢酸を継続的に摂取させた場合の骨格筋における脂肪燃焼ならびにミトコンドリア生合成関連因子の解析、(2)酢酸摂取と運動による効果の比較検討、(3)高週齢動物の骨格筋における酢酸の影響、特に酢酸の抗老化作用の解析、(4)骨格筋における酢酸の作用機序の解明、を目的としている。現在までに、(1)および(2)について検討を行っており、また(3)について予備的な検討を行っているところである。平成25年度の研究において、ラットに酢酸を長期に摂取させた場合の腓腹筋、ヒラメ筋および腹筋における速筋線維および遅筋繊維のレベルを組織染色法による調べると特に腓腹筋において遅筋繊維が増加していたことから、酢酸によるその作用が高齢動物において同様に見られるかを今後明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究では、長期の酢酸投与が高齢動物における骨格筋にどのような影響をおよぼすか検討する。これまで行ってきた予備的な検討では、高齢動物に酢酸を1ヶ月間投与した場合において若齢の動物の場合と異なる骨格筋性状を示した。そこで高齢動物に3カ月間の長期にわたって酢酸を投与した場合の効果を、腓腹筋、ヒラメ筋、腹筋および心筋を用いて解析する。若齢動物においては腓腹筋においてより遅筋繊維が増加し、運動耐久性が増加、また最大酸素摂取量が増加していた。高齢動物において酢酸の長期投与で同様の効果が得られれば、脂肪燃焼効率の増加による脂肪蓄積の増加抑制、運動能力改善など生理的に進む骨格筋の老化を防ぎ、健康寿命を延長させる方向が期待できる。 3ヶ月間の酢酸投与期間に安静時代謝測定、体重および摂餌量を測定する。また3ヶ月後に運動耐久性試験を行う。また3ヶ月投与後に動物を解剖して、腓腹筋、ヒラメ筋、腹筋および心筋を採取し、組織化学染色法により遅筋繊維および速筋線維のレベルを測定する。さらにそれらの骨格筋における筋線維特異的タンパク質の発現量を解析し、若齢動物における影響と比較検討する。 また骨格筋における酢酸の影響の作用機序について解析するために、L6筋管細胞並びににC2C12細胞を用いて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の研究で使用した骨格筋タンパク質の遺伝子発現解析およびタンパク質発現解析に用いる試薬が予定より安価で購入できたこと、また効率的に実験を進めた結果等により若干の未使用額が出た。 動物の安静時代謝および運動時代謝測定において使用するO2およびCO2の校正ガスを購入する。実験動物(ラット)を購入する。試料処理および細胞凍結保存用の液体窒素を購入する。高齢動物の骨格筋における遅筋繊維および速筋線維各種タンパク質の遺伝子発現解析用試薬およびタンパク質発現解析用試薬を購入する。AMPK172Tのリン酸化抗体、抗PGC1a抗体、抗PGC1aリン酸化抗体、抗PGC1aアセチルリジン抗体、抗MEF2A抗体を購入し酢酸の作用機序を解析する。以上の実験に必要な試薬、器具類を購入する。
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