研究課題
醸造酢の主成分である酢酸を継続的に摂取すると骨格筋などの組織に速やかに吸収されてAMPKを活性化し脂質代謝を促進することを示唆してきた。昨年度の研究では、約3ヵ月間の長期酢酸摂取が骨格筋性状に及ぼす影響について検討し、酢酸を摂取したace群では、対照群に比較して体重増加抑制傾向が見られ、運動耐久性試験における運動継続時間の延長、最大酸素摂取量の増加が見られた。また運動耐久性試験中における脂肪燃焼率が高い傾向が見られたことから、筋線維タイプを解析すると、ace群の腓腹筋でタイプⅠ線維が有意に増加していた。そこで本年度の研究ではace群の骨格筋の生化学的性状を詳細に解析した。その結果、ace群ではTypeI線維のマーカー遺伝子であるMHCIの発現量が有意に高く、Tnni1(トロポニンI)の発現量は増加傾向であった。一方、TypeII線維のマーカー遺伝子であるMHCIIbは対照群に比較して有意に減少していた。さらにTypeI線維に多く発現するMEF2aも有意に増加に増加し、PGC-1aは増加傾向が見られた。以上のことから、酢酸摂取により骨格筋における遅筋線維の割合が増加すると示唆された。次に遅筋線維に多く存在するミトコンドリアの含有量について比較した。その結果、ace群では腓腹筋においてミトコンドリDNA量が有意に増加していた。さらにミトコンドリア内膜に存在するコハク酸脱水素酵素活性を比較すると、ace群で有意に増加した。これより、酢酸を摂取すると遅筋線維増加と共にミトコンドリアが増加すると示唆された。酢酸を投与したace群の腓腹筋において、AMPKタンパク質発現量の増加、ならびにリン酸化AMPK発現量の増加が見られた。以上より、酢酸を継続的に摂取すると、AMPKの活性化を介して遅筋線維の増加ならびにミトコンドリアの増加を誘導し、骨格筋における脂質代謝を促進させると示唆される。
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日本栄養・食糧学会誌
巻: 67 ページ: 171-176
Journal of Nutritional Science and Vitaminology
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