研究課題/領域番号 |
24580197
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
川上 浩 共立女子大学, 家政学部, 教授 (90458860)
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キーワード | 食品機能 |
研究概要 |
ラクトフェリン(LF)結合成分を網羅的に明らかにするため、レーザーイオン化飛行時間型質量分析計(MALDI/TOF/MS)でプロテオーム解析を行った。その結果、塩基性の等電点をもつタンパク質およびペプチドが51種類、酸性の等電点をもつタンパク質およびペプチドが43種類検出された。これらの中には、各種酵素活性、免疫調節活性、細胞増殖活性、細胞分化促進活性、抗菌活性、酵素阻害活性などの生理作用がすでに報告されている成分が含まれていた。生理作用に関する報告のないペプチド数種類を含有する画分について、LF自体の作用と比較しながら、培養細胞実験系で免疫調節活性を調べた。OVA特異的TCRを発現するトランスジェニックマウスの脾臓細胞をOVAで刺激し、ペプチド画分を添加して培養し、産生されたサイトカインをELISAで定量した。その結果、ペプチド画分添加でIL-4、IFN-gamma、およびIL-10の産生が抑制されたが、IL-6の産生は影響されなかった。また、BALB/c系マウスの脾臓細胞を抗CD3抗体で刺激し、ペプチド画分を添加して培養したところ、CD4+T細胞の存在比率が低下することがフローサイトメーターの結果から明らかとなった。さらに、BALB/c系マウスの脾臓細胞からCD4+T細胞を単離し、ペプチド画分の存在下において抗CD3抗体で刺激し、培養上清中のサイトカイン産生量を測定したところ、ペプチド画分添加によって、IL-4、IFN-gamma、およびIL-10の産生が抑制された。以上の結果より、本ペプチド画分には、TCR刺激で活性化されたCD4+T細胞の応答を抑制する成分が存在することが明らかとなった。一方、高度に精製したLFには、上記に示したような活性は見出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロテオーム解析で判明したLF結合成分の中で、精製時に構造変化が起こり生理活性を維持した状態で分離できなかった成分を生体成分精製装置で分離したが、高分子タンパク質に関しては、未変性かどうかの活性確認までには至っていないものがいくつかある。
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今後の研究の推進方策 |
構造が明らかになった成分に関しては、LFから単離するだけでなく、市販の試薬を活用して評価することも考慮する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Microsoft社によるWindowsXPのサポート終了に伴い、生体成分精製装置に付属するコントロールシステムのアプリケーション更新が必要となったため。 新OS対応解析ソフトおよび新規パソコンを次年度予算で購入する予定である。
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