研究実績の概要 |
ラクトフェリン(LF)およびLF結合成分の免疫機能調節作用を解明するために、レーザーイオン化飛行時間型質量分析計(MALDI/TOF/MS)でプロテオーム解析したLF結合成分94種類の中から、免疫機能調節作用が現在までに報告されていないペプチド画分を中心に、動物細胞培養系で免疫細胞調節活性を調べた。ヒト骨髄球系白血病細胞株HL60細胞を用いて、好中球様細胞外トラップ形成に及ぼす作用を探索した。トロンボキサン受容体アンタゴニストで前処理したHL60細胞に、各ペプチド検体試料を作用させ、トロンビン受容体活性化ペプチドで活性化させた血小板で刺激した後、培養上清中のDNA量をdsDNAアッセイ試薬で測定し、HL60細胞からのDNAの放出量を調べた。その結果、分子量1,000~5,000の範囲に含まれる3種類のペプチドを作用させた際に、濃度依存的に培養上清中のDNA濃度が減少し、好中球様細胞外トラップ形成によるDNAの放出が抑制された。一方、卵白アルブミン(OVA)であらかじめ免疫したBALB/c系マウスのリンパ節細胞を、抗CD3抗体あるいはOVAとともにペプチド画分を加えて培養したところ、抗CD3抗体やOVAによって誘導されるT細胞増殖応答が完全に抑制された。さらに、上記マウスの脾臓細胞を、抗CD3抗体あるいはLPSとともにペプチド画分を添加して培養し、その際に産生されるサイトカインを測定したところ、IL-17の産生が抑制された。以上の結果より、これらペプチドには、好中球様細胞外トラップ形成、およびTCR刺激で活性化されたCD4+T細胞の応答を抑制する作用があることが明らかとなり、LF結合成分の中に免疫機能調節作用を有するペプチドの存在が見出された。
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