ラクトフェリン(LF)およびLF結合成分の免疫調節作用を明らかにするために,MALDI/TOF/MSでプロテオーム解析したLF結合成分の中から,これまでの研究でT細胞応答調節作用が示唆されたペプチド画分(PF)について,動物細胞培養系でその作用機作を調べた。BALB/cマウスのnaive脾臓細胞をPFとともに培養した後,卵白アルブミン(OVA)で感作したBALB/cマウスのリンパ節細胞と混合培養したところ,OVA特異的なT細胞応答は抑制されなかった。また,OVAで感作したBALB/cマウスのリンパ節細胞をPFで作用させて培養した後,抗CD3抗体あるいはOVAで刺激したところ,T細胞応答は完全に抑制された。さらに,鶏卵アレルギーモデルOVA-IgEマウスにOVAを腹腔内投与し,脾臓細胞を調製してOVAとともに培養するとT細胞応答が観察されたが,PFを作用させると完全にT細胞応答は抑制された。抗原刺激で誘導されるサイトカインの中で,特にTh2系サイトカインであるIL-4およびIL-10の産生が,PFの作用で顕著に抑制された。したがって,PFは制御性T細胞などを誘導してT細胞応答抑制作用を発揮するのではなく,T細胞に直接作用したものと考えられた。また,T細胞はPFの作用で抗CD3抗体や抗原刺激に不応答状態になると考えられた。以上の結果から,LFに特異的に結合しているペプチドに,T細胞応答抑制作用があることが明らかとなった。
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