研究実績の概要 |
メタボリックシンドロームには、さまざまなホルモン、サイトカインなどの因子が関与している。一方、皮膚は、光の影響を受ける機関の1つであり、光の中でもとくに紫外線が皮膚に与える影響については、分子レベルで詳細に研究されている。しかし、紫外線が皮膚を介して、栄養、とくにメタボリックシンドロームに関与する因子に影響を与えるか否かについては明らかになっていない。申請者は、紫外線が皮膚を介して、メタボリックシンドロームにどのような影響を与えるのかを遺伝子の網羅的解析法を用いて明らかにし、また、そのメカニズムを解明することを本研究の目的とした。今までに、皮膚に紫外線を1.6J照射(1日、日当たりの良い場所にいたときに被曝する紫外線量)させることで、皮膚、視床下部および肝臓のCGRP(Calcitonin gene-related peptide) mRNA量、肝臓でのインターロキン(IL)-6、急性期タンパク質(SAA)のmRNA量の増加、脂肪組織でのPPARγ、アディポネクチン、レプチンのmRNA量の減少を明らかにした。また、CGRP増加によってIL-6を介してSAA増加が起こることを明らかにした。 SAAの増加は、肝臓でのTGF-β1の増加、さらにはPAI-1(Plasminogen actgivaor inhibitor-1)を増加させる。昨年度は、これら因子の変動について検討した。その結果、紫外線照射は、肝臓のTGF-β1を増加させたが、PAI-1を有意に減少させた。この矛盾を解析したところ、紫外線照射で増加するCGRPが、TGF-β1で惹起されるERK,JNK, p38のリン酸化を抑制することでPAI-1の減少を引き起こすことを明らかにした。 本研究は、不明な点が多く残る皮膚のEndocrineとNueroendocrine system作用の基礎的なメカニズムの解明の足がかりとなるものと考えている。
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