研究課題/領域番号 |
24580200
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
細野 朗 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70328706)
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研究分担者 |
高橋 恭子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70366574)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 食品機能 / 免疫 |
研究概要 |
腸内に共生している細菌のほとんどが大腸に存在していることから,大腸免疫系の免疫グロブリンA(IgA)産生応答を腸に共生菌がどのように修飾しているのかを明らかにすることを目指した.通常および無菌マウスより小腸パイエル板,盲腸リンパ節,結腸リンパ節を採取してそれぞれ細胞を調製した,無菌マウスでは,小腸パイエル板や盲腸リンパ節の組織のサイズは小さく,細胞数も著しく少ないのに対し,結腸リンパ節は通常マウスと比較してあまり大きな差はみられなかった.次に,調製した各腸管関連リンパ組織をマウス腸内細菌から分離されたBacteroides acidifaciens (BA)の加熱死菌体との共培養した.その結果,結腸リンパ節細胞では,BAの刺激に対して誘導されるIgA産生応答が無菌マウスに比べて通常マウス由来細胞の方が高い傾向がみられた.さらに,無菌マウスにBAを単独定着させたBAノトバイオートマウスを作製し,無菌マウスおよび通常マウスの腸管組織の免疫組織学的な比較検討を行った結果,無菌マウスでは腸管関連リンパ組織の胚中心形成が観察されないのに対して,BAマウスでは小腸パイエル板,盲腸リンパ節,結腸リンパ節の胚中心の形成を観察することができた.以上より,腸管関連リンパ組織のIgA産生応答は腸管部位ごとに異なっており,Bacteroidesは腸管免疫系の組織形成や免疫応答に強く影響を与えていることが示唆された. また,通常マウスの腸管関連リンパ組織の免疫関連遺伝子の発現を小腸と大腸で比較する目的で,盲腸リンパ節と小腸パイエル板細胞のT細胞除去画分を精製してDNAマイクロアレイによる遺伝子発現を調べた.その結果,ケモカインや炎症性サイトカインなど,自然免疫系細胞が抗原感作によって誘導される免疫反応の初期にみられる分子に関するものはパイエル板細胞の方が盲腸リンパ節細胞よりも高い傾向がみられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
無菌マウスを系統維持しながら研究に使用しているが,実験動物施設における空調条件が一時悪化したために,実験に必要な無菌マウスがうまく作出できずに無菌マウスおよびノトバイオートマウスを実験に使用することが困難であったため.
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今後の研究の推進方策 |
大腸免疫系と小腸免疫系の免疫応答が異なることを,さらに分子生物学的な検討を進めていく.特に,大腸と小腸の腸管における環境の違いは,腸内細菌の種類や数が異なることからその代謝産物である有機酸の種類や濃度に違いがみられ,これら有機酸の存在が腸管免疫系,特に免疫グロブリンA(IgA)産生応答二度のような影響を与えているのかを検討する.さらに,腸管免疫系を活性化させている腸内共生菌であるBacteroidesが腸内で大腸免疫系のどういった分子の活性化や制御に関与しているのかを,Bactereoidesノトバイオートマウスを作製することによって,分子生物学的な手法により解析を行う. さらに,経口免疫寛容に関与する腸内共生菌の作用に関しても,その標的細胞を明らかにすると共に,その細胞応答の特徴を解析する.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物(マウス)を用いた解析のため,実験動物の購入費用や,無菌マウスの維持管理などを含めた動物実験に関わる消耗品(実験器具・実験飼料など),細胞の精製や細胞の解析に必要な抗体・試薬類,および遺伝子解析等に必要な試薬類など. 腸内部位ごとの有機酸の解析に必要な委託分析費用など.
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