研究課題/領域番号 |
24580200
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
細野 朗 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70328706)
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研究分担者 |
高橋 恭子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70366574)
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キーワード | 腸内細菌 / 大腸 / 免疫 |
研究概要 |
腸の中には膨大な数と種類のさまざまな細菌が共生しており,これらの腸内共生菌が腸管免疫系に強い影響を与えていると考えられる.腸内細菌叢を構成している細菌種の中に宿主の炎症症状や生活習慣病との関連が指摘されているように,腸内共生菌と腸管免疫系との相互関係について解明することは我々の健康にとっても重要である.特に,ほとんどの腸内共生菌は大腸部位に存在しているが,これまでに解明されている腸管免疫系についての研究は小腸に関するものが多く,大腸免疫系において膨大な数の腸内細菌に対して炎症反応を起こさずに腸内環境を維持できる仕組みや組織の発達,機能はまだ十分に解明されていない.本研究では,大腸部位の腸管関連リンパ組織の細胞を小腸パイエル板細胞と比較することによりその特徴を明らかにすることをめざした. BALB/c マウスから腸管関連リンパ組織として小腸パイエル板(PP),盲腸リンパ節(CeP),結腸リンパ節(CoP)を採取してそれぞれ細胞溶液を調製した.さらに,各リンパ組織の構成細胞の特徴を調べるため,フローサイトメトリーによる細胞表面分子の解析によりT細胞フェノタイプなどについての細胞間の比較を行った. CD4 T細胞の活性化/ナイーブマーカーであるCD69分子の発現について解析を行ったところ,CoP細胞はCD4+ CD69highの発現がPPおよびCeP細胞に比べて有意に低く(p<0.05),CoPにおいてはCD4+ T細胞の感作型細胞の割合が他の腸管関連リンパ組織に比べて低い特徴をもつことが示唆された.腸内共生菌の数が多い大腸部位において、CePとCoPにおける細胞フェノタイプは異なっていることが明らかとなり,特に,結腸部位のCoPの細胞特性はPPおよびCePとは異なる可能性が考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に必要な無菌マウスの系統維持,および繁殖が実験動物施設の空調条件の悪化から一時悪化したため,実験に必要な無菌マウスの確保が十分にできなかったため.特に,腸内細菌の菌体成分を認識する受容体を欠損した免疫不全マウス(MyD88ノックアウトマウス)の無菌マウスの系統維持がうまくいかなかった.その後,現在は,空調条件を改善し,MyD88ノックアウトマウスの無菌化にも成功した.
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今後の研究の推進方策 |
大腸免疫系における小腸免疫系とは異なる免疫細胞の特徴を明らかにすべく,各腸管関連リンパ組織のCD4 T細胞の免疫関連遺伝子の発現について,トランスクリプトミクスによる解析を進めるとともに,腸内細菌の産生する有機酸による各腸管関連リンパ組織の細胞応答の特徴を明らかにする.これらが,腸管免疫系において特徴的な免疫グロブリンA(IgA)産生や経口免疫寛容に与える影響を,無菌マウスやノトバイオートマウス(特定の腸内細菌を有するマウス)で精査する. さらに,特定の食餌条件(プロバイオティクス菌体成分,または難消化性糖質など)の摂取によって大腸免疫系への免疫調節作用について,特に,結腸や盲腸部位の腸管関連リンパ組織の細胞フェノタイプや細胞応答に与える影響を小腸部位の免疫応答と詳細に比較することにより,大腸機能の恒常性や炎症制御に関わる免疫関連因子を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の実施に必要な無菌マウスが,前年度からの動物実験施設内の空調の不調によって繁殖計画が十分に達せられなかったことから,実験動物を十分に確保できず,研究の進捗状況等に一部遅れが生じた.それによって,当初計画していた実験に必要な物品(試薬類・細胞培養器具類など)の調達ができなかったため. 次年度は当初予定していた無菌マウスや特定の腸内細菌を有するノトバイオートマウスを用いて,小腸および大腸部位の腸管関連リンパ組織の細胞に注目した免疫関連遺伝子の発現を解析するトランスクリプトミクスによる解析などを実施するため,必要な試薬類および実験器具類の購入を予定している. また,上記のモデルマウスにおいて,プロバイオティクス菌体やオリゴ糖や難消化性糖類などのプレバイオティクスなどの食品成分を摂取させる条件において,腸管リンパ組織の抗炎症性分子や抗感染分子の発現に注目した大腸免疫系における作用特性を明らかにすることを予定しており,そのための試薬類や細胞培養器具類の購入を予定している.
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