良好な嗜好性・嚥下特性・生体調節機能特性を兼ね備えた機能性食品の創製を行うため、こく味を有するニンニク臭気前駆体物質であるS-allyl-L-cysteine sulfoxide (ACSO)を高濃度に含有する抽出物を調製し、これを添加したゲルの物性と嗜好性評価、および、この抽出物の機能性評価を行った。 まず、ACSOを高含有する抽出物を作製するため、ニンニク鱗茎を、電子レンジ、茹で、蒸し、揚げ加熱に一定時間供し、アリイナーゼを失活する条件の検討を行った。その結果、電子レンジ加熱を20秒行った試料で、最もACSOが残存していた。この抽出物は、甘味、塩味、旨味の増強作用を有していた。 嚥下困難者用機能性食品の創製ため、ACSOを高濃度で含有するニンニク抽出物を添加してゼラチンおよび寒天ゲルを作製し、嚥下困難者用食品の指標の一つであるTPA試験を行った。その結果、ニンニク抽出物1.0%添加までは、ゲル物性にほとんど影響を与えなかった。さらに、スクロース、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムをニンニク抽出物と共に添加し、種々の濃度の寒天ゲルおよびゼラチンゲルを作製した。それらの甘味、塩味、旨味を官能検査により評価した結果、ゲル強度が高い試料においても、呈味増強効果は保持されていた。 次に、ACSOを高含有するニンニク抽出物をラットに経口胃内投与することにより、肝障害の抑制効果を有するか否か検討した。四塩化炭素の投与により、肝障害マーカーおよび酸化ストレスマーカーの値が上昇し、解毒酵素の活性が低下したが、ニンニク抽出物を経口投与後、四塩化炭素を投与することにより、肝障害マーカーおよび酸化ストレスマーカーの上昇が抑制され、解毒酵素の活性低下が抑制された。 以上のように、美味しさ,介護食としても利用できる物性,病気を予防する生理効果を有するニンニク抽出物の調製が可能となった。
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