研究概要 |
申請者は、ビタミンE欠乏によってラットの不安行動が増加することを見出し、この現象を更に解析した結果、「ビタミンE欠乏による酸化ストレスの亢進が、グルココルチコイド分泌増加を引き起こし、不安行動を増加させる」という不安行動の新しい誘導機構を想定するに至った。グルココルチコイド分泌は視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)で制御されることが知られている。平成24年度は、ビタミンE欠乏がHPA軸の各応答段階に及ぼす影響を、通常食あるいはビタミン欠乏食で4週間飼育したWistar系雄ラットを用いて以下の要領で解析した。 (1)経時採血によるストレス(0, 15, 60分)を与えた後に、採血を行った。血中のグルココルチコイド(コルチコステロン)濃度をELISA法により測定した結果、ストレスに応答したグルココルチコイド分泌がビタミンE欠乏群で大きくなった。(2)ACTHを腹腔内投与0, 15, 60分後の血中グルココルチコイド(コルチコステロン)濃度をELISA法により測定し、ビタミンE欠乏がACTHに応答したコルチコステロン分泌に及ぼす影響を検討した結果、ACTHにより誘導されるグルココルチコイド分泌は、ビタミンE欠乏による影響をうけなかった。(3)副腎を採取し、グルコルチコイド合成に関わる因子(ACTH receptor、p450scc)の遺伝子発現量をrealtime PCR法により測定したところ、いずれの遺伝子発現にもビタミンE欠乏の影響はみられなかった。(4)視床を採取し、CRF mRNA量をrealtime PCR法により測定したところ、ビタミンE欠乏の影響はみられなかった。 以上の結果より、ビタミン欠乏によってHPA軸の脳内部分の活性(CRF分泌~ACTH分泌)が亢進し、グルココルチコイド分泌が増加することを明らかにした。
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