研究課題/領域番号 |
24580203
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
西田 浩志 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 准教授 (60322541)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | SchsandrinB / チェックポイント / DNA損傷 / 抗がん剤 |
研究概要 |
抗癌剤の目的は癌細胞のDNAに直接傷害を与える、あるいは合成酵素活性を阻害することで細胞の成長を阻止することにある。しかし、癌細胞はしばしば治療耐性を獲得しており薬剤の効果を十分に発揮できないケースがある。 平成24年度は癌細胞の多くで高い活性を維持している『チェックポイント機構』と呼ばれるDNA損傷修復機能を抑制する化合物の作用メカニズムについて幾つかの研究を行ってきた。生薬成分のひとつSchisandrin B(SchB)はチェックポイント機構における重要な酵素であるATRを特異的に阻害することを報告していた。平成24年度の研究では、SchBに異性体が存在しており、それぞれGomisinNとγSchisandrinと名付けられているものと構造が一致する結果を得た。さらにこの2つの化合物のうち、癌細胞のDNA損傷修復活性を弱め、抗癌剤の作用を増強する結果示したのはGomisinNであることを突き止めた。この内容を日本薬理学会の英文誌(J. Pharmacol. Sci.誌)に投稿し平成25年4月に受理されるに至った。 平成25年度はこれらの結果に加えて、他の有力な化合物の探索に努めたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な天然物および食品素材を対象として、DNA損傷チェックポイント活性を制御する因子を探索し、またそのメカニズムを明確にする事を試みてきた。 SchBについては、これまで我々がチェックポイントに関する情報伝達因子の中でもATRに対する阻害活性を持つことを報告してきたが、今回はこの情報に加えて、GomisinNがATRとの特異的阻害作用を有することを査読付き論文において明確に示すことが出来たことは、有意義であったと考える。 その他の化合物についても現在調査段階であり、幾つかの有力な化合物候補が浮上してきている。メカニズム解明まで幾つかの実験結果が求められるが、結果が出次第、論文等への報告を行っていきたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
幾つかの天然物および食品成分の機能性を明らかにしていく中で、DNA損傷チェックポイントを制御する因子となりうる候補が浮上してきた。たとえば柿葉に含まれるフラボノイド群にも同様の効果が示されている。しかしながら、現時点ではこのフラボノイド群のどの化合物が効果を示すか明確になっていない。 平成25年度はこの活性本体を突き止めるべく、HPLCおよびマススペクトロメトリーを利用しながら同定作業を進めていきたい。 また、これらの成分とマウスを用いたガン細胞移植モデル動物による試験を数回行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費の多くは実験に用いる物品費として計上する。 培養細胞に関する試薬類、タンパク質発現分析に用いる抗体および試薬類、事件動物購入および維持・解析費用などに用いる。 その他は、得られた成果を発表する学会旅費および論文投稿料などとする。
|