研究課題/領域番号 |
24580203
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
西田 浩志 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 教授 (60322541)
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キーワード | チェックポイント / 柿葉 / DNA損傷 / 重粒子線 |
研究概要 |
本課題の主目的は、食品成分中に含まれるDNA損傷応答反応の制御因子を探索することにある。とくに、DNA損傷応答反応は「チェックポイント」と呼ばれる様々な分子群、とりわけ生体内分子のセリン及びスレオニンに対するキナーゼ反応によって起こるシグナル伝達によって、DNA損傷後の癌細胞の生死を決定づける役割を持つ。放射線療法や抗癌剤治療によるDNAのダメージや化学的修飾は、無限の増殖能力を持つ癌細胞が一旦停止するものの、チェックポイント活性の上昇を招き、ダメージを修復する機会となり、結果として治療耐性を獲得する要因となる。 我々はチェックポイント活性を負に制御することで、放射線または化学療法の際の癌細胞の修復を起こりにくく、加えて損傷を負ったままのDNAを積極的に複製させることで最終的に死に至らしめることに貢献できるような化合物の探索を続けてきた。 昨年度までの研究から、幾つかのDNA損傷チェックポイント制御因子を食品成分または生薬など天然物から候補として得ることができた。生薬五味子に含まれるShisandrinBについては昨年度報告したとおり、チェックポイントシグナルの最上流にあるATR(毛細血管拡張性運動失調症およびRad3関連遺伝子)の活性を阻害することを報告した。今年度はさらに別の角度から解析を行ったところ、柿葉に含まれる成分が同じくチェックポイントシグナル最上流で働く分子のひとつATM(毛細血管拡張性運動失調症原因遺伝子)の活性を阻害することで放射線治療、とくにマウスの重粒子線治療に対して増感作用を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、様々な食品成分によるDNA損傷応答反応(チェックポイントシグナル)制御を試みた。今年度はとくに柿葉抽出物に含まれるフラボノイド成分がチェックポイントシグナルの中でも最上位に位置するATM(毛細血管拡張性運動失調症原因遺伝子)のキナーゼ活性を阻害することを見いだした。この情報について、査読付き海外科学雑誌に投稿したところ、受理されるに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの本課題研究成果から、生薬五味子および柿葉フラボノイドなど、DNA損傷チェックポイント活性に対する阻害作用が示されている。引き続き対象となる成分及び化合物の探索を続けたい。現在、米糠の抽出物中に同様の活性がある画分があることを見いだしている。今後はこれがどのような成分によってチェックポイント活性のどこの部分で制御しているか、あるいは機能を発揮しているか追跡していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ予定通りに執行されたが11,565円という若干の未使用分が残った。 次年度の消耗品購入に充てる。
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