研究課題/領域番号 |
24580204
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
津嶋 宏美 金城学院大学, 薬学部, 准教授 (10080079)
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研究分担者 |
堂前 純子 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70227700)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コレステロール / apoE ノックアウトマウス / ABC A1 トランスポーターノックアウトマウス / カベオリン / 行動解析 |
研究実績の概要 |
高コレステロール血症を呈するapoE knockout (KO) miceと低コレステロール血症を呈するABC A1 transportor KO miceの行動解析を行った。不安行動、痛覚反応、新規環境適応能力は、両者ともwild-type (WT) mice と差異がなかった。しかし、Morrisの水迷路を用いて記憶能力を検討したところ、apoE KO mice では他者と比較して有意に学習能力が減弱していた。コレステロールは重要な細胞膜構成成分であるので、コレステロールが多く含まれている細胞膜微細構造カベオラに着目した。カベオラには、細胞内情報伝達関連分子が集積していること、カベオリンが局在することも知られている。ABC A1 KO miceとWT miceの大脳細胞膜成分のカベオリンタンパク発現は、電気泳動・ウエスタンブロティング法及び組織切片の免疫染色法のいずれにおいても差は認められなかった。しかし、電子顕微鏡による構造観察を行ったところ、脳組織では観察できるカベオラ構造は少なかったが、ABC A1 KO miceで多く認められる傾向にあった。 一方、高大豆油含有飼料摂取ラットの体温は、正常飼料摂取や高ラードや魚油含有飼料摂取動物と比較して、生理的条件下で低く、また、薬物の反応性も異なっていた。高大豆油含有飼料摂取ラットでは、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP)の視床下部や脂肪組織などのmRNA発現には変化はないが血漿濃度が増加していること、IGF-1の血漿濃度は変化がないこと、IGFの脳内投与では体温の上昇が認められることなどを明らかにし、高大豆油含有飼料摂取動物における体温調節機構の変容の原因の一端がIGFBPである可能性を示唆した。現在IGFとIGFBPの体温への影響をより詳細に検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初使用を予定していた自然発症apoE欠損マウスを用いて実験を開始していたが、遺伝子交雑のため販売が中止となり入手できなくなった。急遽、apoE KO miceを繁殖維持している研究者に依頼し入手したが、改めて実験をすることになったため計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、apoE KO miceについて、1)各種血漿アディポカイン濃度の測定、2)カベオリンmRNAとタンパク量の発現、3)カベオリンの免疫染色による光顕レベルでの観察およぶカベオラ構造の電顕による検討、4)脳内コレステロール、各種脂肪酸濃度の測定を実施、あるいは近々着手する。今後、apoE KOマウスとABC A1 トランスポーター KOマウスより肥満細胞を採取し、WT マウスのそれと比較することによって細胞膜機能、カベオラ構造を検討し、コレステロールの細胞膜機能の寄与を検討する予定である。 一方、高大豆油含有飼料接種ラットにおける体温調節機構への検討では、1)IGFBP1~5、IGF-1およびIGF-2単独、各種IGFBP前処置におけるIGFの体温への影響、2)IGF投与による脳内PGE2とIL-1β濃度のマイクロダイアリシス法による測定、3)IGF投与による脳内PGE2とIL-1βmRNA発現のPCR法を用いた検討、4)IGFによる体温変化時の脳内リン酸化タンパクの検索などを進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、自然発症apolipoprotein E (apoE) 欠損マウスを購入し使用する計画であり、実験に着手していた。しかし、平成26年度に購入業者より遺伝子の交雑が認められたため出荷を停止するとの連絡があった。そのため、同様の高脂血症を呈するapoE knockout (KO)マウスを譲り受け実験することにしたが、研究の再開に時間がかかってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、apoE KOマウスの血中サイトカイン測定のためのキット、免疫組織染色標本作成委託、その他試薬の購入費に充てる。
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