研究実績の概要 |
平成27年度の主な研究成果は次の2つである。 1.栄養素・食品素材、特に食品廃棄物・副産物から哺乳類DNA合成酵素(DNAポリメラーゼ、pol)分子種選択的阻害剤の探索を実施した。具体的には、(1)南国フルーツのマンゴスチンの不可食部である果皮、(2)蕎麦(ソバ)種子の不可食部である殻部分(外殻と渋皮)、(3)飲食店で使用した後の廃棄油(酸化油脂)、などを使用した。これらのエタノール抽出物からpol阻害活性を指標にして、各種クロマトグラフィーを駆使してpol阻害活性成分を単離・精製し、核磁気共鳴(NMR)および高分解能分子量解析(HR-MS)により化学構造を決定した。マンゴスチン果皮から同定したβ-マンゴスチンは、DNA複製型のpolα,δ,εを強く阻害して、ヒトがん細胞の増殖を抑制しアポトーシスを誘導した【Int. J. Oncol., 2016】。蕎麦殻から同定したステロール配糖体エステル(6-palmitoyl β-sitosterol glucoside)は、DNA修復・組換え型のpolλを強く阻害して、動物(マウス)による抗炎症活性および抗アレルギー活性を示した【学術論文投稿中】。 2.哺乳類polλ阻害剤である「クルクミン」とビタミンK3誘導体である「ナフトキノン」について、マウス・マクロファージであるRAW264.7細胞におけるマイクロアレイ解析を実施した。(1)polλ阻害剤無添加のコントロール群、(2)リポ多糖(LPS)で炎症刺激を与えた群、(3)polλ阻害剤を添加した群、(4)LPS+polλ阻害剤を添加した群、以上の4群について、炎症シグナルやアレルギーシグナルに関連する因子(タンパク質)20種類のmRNA発現量を各群間で比較した。その結果、polλの発現量は(2)で亢進、(3),(4)で減少し、この傾向は、炎症マーカーであるTNF-α、炎症酸化メディエーターであるiNOS、炎症脂質メディエーターであるPGE2の発現量と正の相関を示した【学術論文投稿準備中】。これより、polλ阻害活性による抗炎症の作用機序が示唆された。
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