研究課題/領域番号 |
24580208
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
中川 博之 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品安全研究領域, 主任研究員 (30308192)
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研究分担者 |
清水 公徳 千葉大学, 真菌医学研究センター, 助教 (40345004)
横山 耕治 千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (80092112)
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キーワード | Aspergillus niger / フモニシン / 黒麹菌 / 生合成 |
研究概要 |
千葉大学真菌医学研究センター保存菌株より選抜した代表的な国産A. niger株を培養後、培養液中におけるフモニシン産生の有無を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて調べた。その結果フモニシンB2が検出され、同菌株のフモニシン産生が確認された。また、フモニシンの異性体であるフモニシンB1およびB3は検出されなかった。一方、この菌株についてフモニシン生合成遺伝子クラスター内の代表的な遺伝子として知られるfum8(以下kum8遺伝子とする)の有無をPCRとサザン解析を用いて調査したところ、fum8と推定される遺伝子が存在することが確認された。そこで、本菌株においてfum8遺伝子機能がフモニシン産生性に関係しているかを調べるため、fum8遺伝子破壊株を作出し、その性状を解析した。その結果、fum8遺伝子破壊株ではフモニシンB2産生が完全に失われていることが確認された。また、fum8遺伝子破壊株は生育速度、ストレス感受性など、フモニシンB2産生以外の表現型に関しては野生型株のそれと相違点が見出されなかった。これらの知見から、fum8遺伝子はフモニシンB2産生にのみ関与する遺伝子であることが示唆された。H25年度はさらにこの遺伝子破壊株にfum8遺伝子を再導入することにより、破壊遺伝子を修復した再導入菌株を複数作製した。野生株と同等レベルではなかったが、再導入菌株においてフモニシンB2産生性が確認され、fum8遺伝子とフモニシンB2産生性の関与がより強く示唆された。fum8遺伝子がフモニシンB2生合成クラスターの一部を構成することは従来報告されているが、当該遺伝子の破壊株および再導入株を作製しフモニシン産生との因果関係を直接証明した報告例はなく、本研究成果が最初の例である。フモニシン生合成遺伝子破壊株が産生する生合成中間体に関する候補化合物も検出されたため、現在機器分析手法による同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成25年度の研究計画は、フモニシン生合成遺伝子破壊株が産生する生合成中間体の同定と、フモニシン合成遺伝子再導入株におけるフモニシン産生性再現の確認であった。本研究遂行上で最も困難な過程であると予想された、遺伝子破壊株の作製と再導入株の作製が完了しており、生合成中間体も同定には至っていないが候補化合物が検出されている。
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今後の研究の推進方策 |
フモニシン生合成中間体の候補化合物が検出されているため、機器分析手法による同定を行う。H26年度は本研究においてフモニシン産生が確認されたA. nigerの遺伝子情報を千葉大学真菌医学研究センターの系統分類情報と照合することで、A. nigerグループにおけるフモニシン産生菌の発生割合と系統種に因果関係があるかどうかを明らかにする。
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