研究課題/領域番号 |
24580209
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
隅田 明洋 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (50293551)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アロメトリー / 樹幹 / 樹幹 / 個体葉量 / 幹乾重 / 葉面積指数 / 幹バイオマス / 気象要因 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、ヒノキ林長期調査データに基づく解析を行った。とくに、ヒノキ林調査地の幹バイオマスおよび森林全体の葉量(葉面積指数LAI)の長期変動が、年変動する気象要因のうち何の影響を最も受けているかを詳細に調べた。その結果、ある年の幹バイオマスの増加速度とその年のLAIにはそれぞれ別の気象要因が影響していること、その気象要因とLAIとの関係性にはヒノキが常緑樹であることも関係していると考えられること、を見いだした。これらの解析結果をまとめた論文の原稿をほぼ完成させ、本年度末の時点で投稿間近の状態となった。これらの結果は、本研究課題の目的である樹形のTTモデルの成立理由解析において、個体の幹の長さと幹断面積との関係を個体の幹乾重および葉量との関係に発展させたものと位置づけられる。 また、前年度の研究実績概要で報告したとおり、本研究課題の遂行のなかで、樹木が成長してもTTモデルが成立し続ける生物的メカニズムを説明する仮説が生まれた。この仮説の検証の一部として、樹木の枝や葉芽の生死などに関する野外調査や解剖学的観察を、北海道大学の大学院生とともに北海道大学研究林のアカエゾマツ人工林で行った。その一次解析の結果からは、上述の仮説と矛盾しない結果が得られた。さらにまた、枝内の芽の生死を制御する細胞生理学的知見や測定からもこの仮説を支持できるかどうかを検討するため、資料収集および専門家との情報交換を行った。 なお、本課題の成果として平成24年度にTree Physiology誌にオープンアクセスで発表した論文(Sumida et al. (2013))は、同誌ホームページ上に毎月発表される"Most-read Articles"において、2013年10月から2015年3月現在まで18ヶ月連続で上位10位以内にランクされている(うち、5位以内は13回)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も前年度と同様に、研究当初に予定していた計画の進行順序を変更して、Tree Physiology論文(本課題平成24年度成果)を発端として新規に派生したヒノキ林のLAIや幹バイオマス増加速度の長期パターンと気象要因との関連についての解析を最優先させた。この解析については比較的順調に進み、日本植物学会第78回大会(明治大学、川崎市)において成果の一部を発表し、これに関する論文原稿も年度末の時点で投稿間近の状態となった。さらに、この解析から新たに発生した仮説(研究実績の概要参照)の補助的検証のための野外調査も行い、そのデータの一次解析結果を第126回日本森林学会大会(北海道大学、札幌市)において口頭発表することができた。 以上に述べた新規の解析および補助的調査や研究が順調に進んだ一方で、研究進行順序の変更にともない、研究当初は最初に行う予定としていた樹形のTTモデル成立理由関連の研究が後回しとなり、データ解析はほぼ終了しているが論文化の作業に着手するには至らなかった。このような意味で、研究はやや遅れている。 また、平成25年6月上旬にブラジルで成果発表を行う予定であった国際学会が参加者不足のため開催予定の約1か月前に中止となった。このため、当初目的としていた国際学会発表は叶わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
LAI長期変動メカニズムに関する論文については完成間近の状態であるため、次年度(平成27年度)の早い時期に英文校閲を済ませて国際誌に投稿する予定である。さらに続けて、後回しにしていた樹形のTTモデル成立理由解析の論文原稿作成に取りかかる予定である。そのデータ解析はほぼ終了しているため、次年度内に国際誌への論文投稿に漕ぎ着きたいと考えている。 また、樹木が成長しても樹形のTTモデルが成立し続ける生物的メカニズムを説明する仮説の補助的検証のための野外調査はまだ十分なデータを得られていないため、次年度も継続する予定である。また、前年度と同様に、解析の合間に、樹木生理学的な研究を行っている国内の研究者との情報交換およびディスカッションも継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度(平成25年度)の計画では、本年度(平成26年度)2014年6月上旬にブラジルで開催予定の林冠過程に関する国際学会(IUFRO Canopy Processes; Complexity in Forest Canopy Processes)で成果発表を行う予定であったが、主催者側が開催のおよそ一ヶ月前に急遽この会議自体の開催を中止すると発表した(参加申込者が少なかったため、という理由であった)。このため、海外出張旅費が未使用となった。一方、樹冠の発達過程に関する仮説検証を補強するための野外調査および解剖学的観察の必要が予定外に生じたため、これらの調査費用に海外旅費の一部を充てたが、この調査等の実施のために、執筆中であったヒノキ林LAIの長期変動と気象要因との関係に関する論文の完成が予定より遅れ、その英文校閲料、オープンアクセス料等が未使用額として発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の論文については本文原稿および図表はほぼ完成しており、速やかにその他の投稿に必要な体裁を整えたうえ、英文校閲を経て平成27年7月頃までに国際誌に投稿する見込みである。また、その論文の受理は同年度内を見込んでいる。次年度使用額は、これらの英文校閲料およびオープンアクセス料として使用する。さらに、研究情報交換および学会発表のための旅費や論文執筆にともなう消耗品等として全額を使用できる見込みである。
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