研究課題/領域番号 |
24580210
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
國崎 貴嗣 岩手大学, 農学部, 准教授 (00292178)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ケヤキ / 雑草木 / 刈り払い |
研究概要 |
刈り払いの違いがケヤキの生残と成長に与える効果を調べるため,既設の7m×10mの試験地Aに加え,新たに5m×43mの試験地Bを設置し,これらの中に計71個の1平方m調査枠を置いた。5月から9月まで,概ね2週間おきに調査枠内のケヤキの樹高と生死を確認した。また,展葉前の4月と着葉期の7月に,調査地における地上高2mの相対光量子束密度を推定した。調査により,2012年には当年生実生が多かったこと,相対光量子束密度が5%未満と低くてもケヤキ稚樹や実生は生存可能であることを確認した。これらの結果は,広葉樹林化の目的樹種として,ケヤキが適していることを示唆する。 刈り払いの違いが雑草木群落の地上部と地下部の構造に与える影響を調べるため,概ね2週間おきに調査枠内の被度を調べるとともに,既設の試験地A内の調査枠では雑草木の樹種,樹高も調べた。調査により,試験地Bに比べて試験地Aでの雑草木の繁茂が著しいことを確認した。また,試験地Aでは前年(2011年)よりも約2ヶ月早く,ほぼすべての調査枠における被度が最大の5に達した。これらの結果は,伐採の翌年よりも伐採後2年目に雑草木の繁茂速度が高くなることを示唆する。 刈り払いの違いと作業功程との関係を明らかにするため,伐採後2年目にあたる試験地Aにおいて,7月と8月に,6調査枠ずつ全刈りと坪刈りをおこなった。被度が5に達してから1ヶ月後の7月には,1平方mの刈り払いに,全刈りでは平均8.8分,坪刈りでは平均3.7分を要した。また,8月に実施した2回目の刈り払いでは,全刈りでは平均4.1分,坪刈りでは平均4.6分を要した。これらの結果は,雑草木が繁茂した状態では,坪刈りは全刈りの半分の時間で済むものの,あまり繁茂していない状況では,坪刈りと全刈りに要する時間はほぼ同じであることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
刈り払いの違いがケヤキの生残と成長に与える効果については,設置した調査枠数を実施計画より若干減らしたものの,実施計画通りの項目について定期的に調査できているため,おおむね順調に進展している。 刈り払いの違いが雑草木群落の地上部と地下部の構造に与える影響については,採土試験で実生発生をほとんど確認できず,埋土種子の組成や密度を明らかにできなかった。しかし,雑草木の地上部については実施計画通り,定期的に調査できている。これらのことから,おおむね順調に進展している。 刈り払いの違いと作業功程との関係については,実施計画通り,定期的に調査できているため,順調に進展している。 研究の総括としての資料収集(出張)については実施計画通りにできた。また,データ解析および論文執筆については三報分を遂行した。 以上の3つの研究項目を総合すると,平成24年度には,おおむね順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
刈り払いの違いがケヤキの生残と成長に与える効果を調べるため,既設の71個の1平方m調査枠について,5月から9月まで,概ね2週間おきに調査枠内のケヤキの樹高と生死を確認する。また,展葉前の4月から落葉期の10月まで,概ね1ヶ月おきにに,調査地における地上高2mの相対光量子束密度を推定する。これらは研究実施計画と同じ調査項目である。 刈り払いの違いが雑草木群落の地上部と地下部の構造に与える影響を調べるため,概ね2週間おきに調査枠内の被度,雑草木の樹種,樹高を調べる。これは研究実施計画通りである。一方,地下部調査については,試験地における塹壕法の作業功程をあらかじめ把握する必要がある。そこで,試験地内で調査枠でない3箇所で,7月頃に塹壕形成,根茎の垂直分布のスケッチ,土壌の水平方向への除去,根茎の水平分布のスケッチにどの程度の時間を要するのかを明らかにする。これらの情報を基に,26年度に本格実施する地下部調査方法を確立する。 刈り払いの違いと作業功程との関係を明らかにするため,7月と8月に,24調査枠ずつ全刈りと坪刈りをおこない,作業時間の計測と刈り取った雑草木の乾燥重量を計測する。これらは研究実施計画と同じ調査項目である。 研究の総括としてのデータ解析および論文執筆をさらに活発化するために,上記の地下部調査の削減で捻出したエフォートをあてる。最低でも論文2報を作成し,投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に使用する予定の研究費が生じたのは,旅費で約5万円,謝金で約7万円を使用しなかったためである。大学運営活動(本務)にかかる時間的制約のため,資料収集を目的とした東京出張(1泊2日)をもう一回できなかったことに加え,秋期における試験地Bの除伐作業を実施できなかった。 25年度の研究費82万3千円については,物品費37万円,旅費22万円,謝金17万円,その他6万円を目安に使用する。物品費37万円(研究実施計画では30万円)のうち,増分7万円を24年度末の調査時に破損した測桿を新規購入するために充てる。旅費22万円(研究実施計画では16万円)については,日本生態学会大会(広島)参加で12万円,日本森林学会大会(大宮)参加で5万5千円,資料収集(東京)で4万5千円を充てる。謝金17万円(研究実施計画では24万円)のうち,減少分7万円は地下部調査の削減に由来する。その他6万円(研究実施計画では0円)については,論文校閲費(2報分)に充てる。
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