刈り払い法の違いがケヤキの生残と成長に与える効果を調べるため,26年度には71個の調査枠を対象に,5月から9月まで一ヶ月おきに,ケヤキの樹高と生死を確認した。また,着葉期の7月に地上高2mの相対光量子束密度(光量)を推定した。低光量(光量2%,9%)の調査地において,25年夏までに加入した実生・稚樹の26年秋の生存率は80%前後でほぼ同じだった。ただし,光量2%の調査地では,林床植生被度が高くないものの,ほとんどの実生・稚樹の樹高成長量は5cm/年未満と低かった。また,光量9%の調査地では,樹高成長量5cm/年を超える実生・稚樹が複数見受けられるものの,全調査枠で林床植生被度が最高の5に達し,実生・稚樹の大半は樹高成長量5cm/年未満であった。一方,比較的高い光量(光量30%)の調査地では,刈り払い法に関係なく,大半の稚樹が樹高成長量5cm/年を超え,期首樹高が高いほど樹高成長量が高かった。以上の結果から,前生樹としてケヤキを確保した後には,主伐により光量30%かそれ以上に改善するのが望ましい。 刈り払い法の違いが雑草木の地上部構造に与える影響を調べるため,光量30%における17個の調査枠で,5月から9月まで林床植生被度と高さ0.2m以上の木本の樹高を測定した。刈り払い法に関係なく,26年秋の被度は5に達した。26年秋の地上部構造は刈り払い方法により異なり,刈り払いなしの場合,上方四分位1.9m,最大3.0mに達した。坪刈りの場合,上方四分位1.2m,最大2.6mと若干低くなるとともに中央値以下の高さが顕著に低くなった。全刈りの場合,最大0.4mと雑草木の地上部発達が抑制された。 1平方m当たりの刈り払い時間は,坪刈り4分程度に対し,全刈り9分程度であった。全刈りによる実生の生残促進効果,稚樹の樹高成長促進効果は認められるものの,全刈りを広域に適用するのは現実的でない。
|